午後からの出勤-1
咲良は、
『定時位だけど、仕事次第です。』
と答える。桜井は、
『5時位に連絡する。』
と言い、
『そろそろ着くぞ、何処で下ろす?』
と聞いて来た。咲良は、
『1ブロック手前で右折して、2ブロック行った所で止めて下さい。』
と伝えた。桜井は、
『解った。』
と言うと、咲良の言った場所まで行ってくれた。咲良は、周りを見て見知った人物が居ないか確認して車を降りた。桜井は、咲良が降りるとスピードを出し行ってしまう。咲良は、
【仕事終わりに、車でどこかに連れて行くのかしら?】
と想像し、その後にするであろう事を考えると体が熱くなった。咲良は、捜査課のある建物に着くと裏口の職員用入口から入り、職員用エレベーターで職場の有るフロアまで行く。
途中、知り合いの職員達に喪服の事を聞かれ説明しないといけなかった。女性用シャワールームで軽くシャワーを浴び、手早く仕事用の服装に着替えて捜査課に行く。
部下達は、昼休憩中で職場には誰もいない。咲良は、自分の机に着くと早速仕事に取り掛かる。部下達が休憩から戻り、咲良に挨拶していく。咲良も返していると、その中の一人が
『課長が、先ほど来られてチーフが来たら自分の所に来る様伝えてくれと言ってましたよ。』
と教えてくれた。咲良は、その部下に礼を言い早速課長の部屋へ向かう。課長の部屋をノックすると返事があり、中に入ると課長が他の捜査チームのチーフと話している。咲良は、
『部下に課長がお呼びと聞き、参りました。』
と話す。課長は、
『うん、君に話しが有ってね。』
『今、君のチームには例の事件の書類作成をやって貰っていて、事件捜査から外している。』
『だが事件が多過ぎて、そうも言っていられない状況だ。』
『それで、君のチームの半分を篠田チーフのチームの応援をして貰い、半分を今まで通り書類作成にと思っている。』
課長は、
『奥山君、半分の人数で書類作成出来るかね?』
『無論、君には書類作成をやって貰うよ。』
と聞いて来た。咲良は、
『大丈夫だと思います。』
『篠田チーフのチームから応援を貰いかなり進んでおります。』
『今度は、こちらが応援して返したいです。』
と言いながら、
【応援は無くなり逆に半分居なくなるのか!』
【また午前様だな。】
と思った。課長は笑顔を見せ、
『うん、頼むよ。』
と言う。咲良と篠田は、二人で課長の部屋を辞し歩いてゆく。篠田は、大柄な男性捜査官で咲良の同期でもあった。篠田は、
『すまん!』
『まだ人減らすほど、余裕無いだろう。』
『部下から聞いていた。』
咲良は、
『良いのよ、応援ありがとう。助かったわ。』
『特殊詐欺グループの張り込み場所、かなり多くて人手不足だと聞いていたわ。』
『お互い様だから、気にしないで。』
と笑顔で話す。篠田は、
『そちらの捜査官とうちの捜査官の顔合わせと、状況説明を兼ねて会議をしたい。』
『3時からでどうだろう?』
と言うと、咲良は
『了解。行かせるわ。』
『場所は?』
と聞く。篠田は、
『5階の第3会議室を予約している。』
と答えた。咲良は、
『解ったわ。』
『じゃあ、またね!』
と笑顔で話し篠田とは別方向に向かう。篠田は去って行く咲良のお尻を見ながら、
【色っぽくなったなぁ。】
【研修時代、口説けば良かった。】
と思った。咲良は、自分の捜査課に戻ると部下達に応援の話しをして、3時から会議が有る事を伝え、自分以外は全員参加だとも話す。
そして会議が終わったら、そのまま帰って良いと言うと、部下達は、早く上がれるのと書類仕事から解放されると言う事で喜んでいた。咲良は、
【今日休暇で来てない部下達からのクレームが入り、結局応援は交代制になるだろう。】
と苦笑した。部屋では、黙々とみんな仕事をしていた。部下達は3時からの会議に間に合わせ、そのまま帰れる様にだ。咲良が、次の書類に手を伸ばした時上着の中でスマホが振動する。
画面を見ると〈桜井太郎〉と出てる、
【何だろう?】
【5時位に掛けると言っていたけど。】
と気になり、迷ったが掛け直す事にした。部下達に、
『すぐ戻るから。』
と声を掛け、部屋を出ていく。部下達は、
『旦那さんからだな。』
『今日の法事も最後まで居られなかったみたいだ。』
などと話し、
『管理職、大変そうだな。』
『俺、目指すのやめようかな。』
『なれんのか?』
の言葉が飛び交い、笑い声が出た。