出逢い-7
翌日の夕方
義人に母親が呼び掛ける。
「義人〜!
そろそろ夕飯が届くころよ〜
降りていらっしゃい!」
ダイニングテーブルに着くと
AIが無人配送した料理を
母親がテーブルに並べていく。
「あら?
今日はワインが届いてないわね…
頼むの忘れたかしら?
確か少し残ってたわね…」
ワインもテーブルに出される。
「どうしたの?
こんな豪勢な料理…
なんかの記念日だった?」
「別にそう言う訳では無いのだが
義人が仕事の事を
考えてくれているのが
父さん、嬉しくてな………」
「なんだよ…
まだ働くって決めた訳じゃ
無いのに…」
「ははは、そう言うな!
母さんだって喜んでいるんだぞ」
「そーよ!
お母さんも義人には
立派になって貰って
お嫁さんを貰って
可愛い孫が見たいわ〜」
「ちょ、ちょっと早いだろ!?
相手も居ないのに孫だなんて…」
「ふふふ
そんな事無いわ!
お父さんの会社に入ったら
すぐにでも見つかるわ!」
「まぁ今夜はちょっと付き合え!
お前の将来のために」
父親がワインを注ぐ。
夕食を三人で食べ、ワインを飲み
二人は盛り上がっている。
父親は美人秘書の話をする。
母親も嬉しそうに聞いている。
「ところで、義人
お前はどんなタイプの女性が
好みなんだ?
なんなら
お前の好みの女性を
お前の専属秘書として
採用してもいいんだぞ!」
「あら、その案!良いわね♪」
母親もかなり乗り気になっている。
「あ、うん……別にタイプなんて…」
義人の脳裏にはミサの事しかない。
義人は食事を済ませると
すぐに自分の部屋に上がってしまう。
「もう!
お父さんが美人秘書の話しなんか
するからよ!」
「母さんだって
孫の話しなんか
するからじゃないか?」
義人は椅子に座り
ゴーグルを装着し
バーチャル世界に入っていく。
いつもの部屋にログインすると
部屋には皆が集まっていた。
「ユキト!キタキタ!
待っていたのよ」
すぐに声をかけてきたのは
カノンだった。
「みんな集まっていたんだな?」
「そうよ!今日はユキト
遅かったね?」
「ああ…うん…」
ユキトは家での事を思い出したが
カーブに止められていた事を
思い出す。
「ちょっと家で酒を
飲むことがあって……」
「へぇ〜じゃあ
今日のユキトは酔っているんだね?」
「そんなに量は飲んでいないから
酔ってはないよ…」
「ふふふ
ユキトは
お酒が飲める年齢だったんだね?」
「え!?そうだよ…」
「へへへ
なんだか今日のユキト、大人♪」
「そう言うカノン
お前は歳、幾つなんだよ?」
「あー!
女性に歳を聞くのって失礼よ!」
「ああ…そうだな……
バーチャルでは年齢なんて
関係無いもんな……
ところで
全員揃って
何の話をしていたんだよ?」
「そうそう!
今ね〜みんなでハワイコミュ旅行に
行こうって話していたの!
ユキトはどう思う?」
「ハワイって
いくらバーチャル旅行でも
結構な値段するんじゃ無いのか!?」
カーブが話しに割り込む。
「そうなんだけどよ〜
皆で積み立てしてさ
二日くらいなら
何とか行けるんじゃないかって
話していたんだ」
「いつ頃行くつもり?」
「そうだな〜月々積立して
一年後かな?ユキトも行くだろ?」
「ねぇねぇ〜行こうよ〜みんなで!
絶対に楽しいよ!」
カノンの目が輝いている。
「なんだよ!?
アバターの
目キラキラモード使って……
俺からも大事な話があって……」
ユキトは意を決して話し始める。
「実は…俺…
仕事を始めようって思ってるんだ!」
カーブの顔が曇る。
「ちゃんと就職して
働こうと思って…
だから
その…休みが合えば行けるかも……」
カノンが寂しそうな顔をして
「え〜!?
ユキトはニートだったの?
てっきり立派な社会人かと
思っていた!」
「まぁニートって言えばそうか……
そんなつもりは無かったけど……」
「それじゃ〜
ユキトもハワイコミュに行けるって
事で良いよね?」
「そうだな……」
「やったー!!
これで皆でハワイに行ける!」
跳び跳ねて喜ぶカノンに
ホッと胸を撫で下ろすカーブ。
「どんな水着にしようかな?
ユキトはどんな水着が好き?
可愛いの?ちょっとエッチなの?
バーチャルだから
何でも着られるよ〜♪」
「や、いや!別に何でも良いよ!」
「あ!?赤くなってる〜
ユキト、エッチなの想像したでしょ?」
「ば、バカ!
アバターだから赤くなる
はずないだろ?」
「わたし〜
リアルでもスタイルいいのよ〜
見てみたい?
ユキトだけなら見せてあげても
良いかな〜?」
「いいよ!別に!」
「えー!?何だかつまんない!…
あっ!?
そろそろ私、戻らないと!
お母さんに叱られちゃう!
それじゃ〜じゃーねー!バイバーイ!」
カノンはリアルの世界に消えていく。