華恋の回想-1
「衛生兵、衛生兵はどこだ!」
至るところで、怒号が飛び交っていた。私自身、弾着のimpact(衝撃)で、吹き飛ばされて一時意識が混濁した。
私はよろめきながら、立ち上がった。すると、数ヤード先に老兵が倒れているのが見えた。私は彼を抱き抱え、「しっかりしろ。」と呼びかけた。
彼の左下肢は瓦礫で潰れ、出血が酷かった。彼は、紫色に変色した唇を震わせて、何かを呟いた。”Karen..., I can’t leave without....confessing my guilt to her. (カレン。。。私は彼女に自分の罪を告白せずに、逝くことはできない。)”と言って、彼は意識を失った。
Karenとは、私の名でもあるが、英語圏の女性の間では、ごくありふれた一般的な名前だ。
「貴様、衛生兵か。こちらへ来い。怪我人が多数出ている。助かる命を救うことを優先しろ。」と誰かが、私に呼びかけた。
その時、その老兵のdog tag(認識票)が見えた。”Jeff....Clifford ...”血糊で汚れていて所属まではよく見えなかった。
Clifford?どこかで、聞いたことがあるような、ないような、これもまた、ありふれた名字だ。肩の階級章を見ると、Colonel(大佐)だ。
「こちらは、大佐殿だ。」と私が言うと、先程、私に声を掛けた男たちは血相を変えて、飛んできた。
「こちらの方は、連隊長殿だ。彼の救命を最優先しろ。」
とは言え、彼のバイタルサインが基準値を大幅に下回っていることは明らかだった。彼は、救急医療班の担架で運ばれていった。
私は、その後他の怪我人の手当てに当たった。