娘と母と そして 父と夫-7
「ねえ。本当に見てるだけ?」
両親たちの、子どもたちの存在を忘れた動きに、
いや、互いの真のパートナーが真横にいるということさえ捨て去った、
親と言う立場も意識もすべて捨て去った、
単なるオスとメスのような本能のままの行為に刺激されたのか、
紗理奈は自分の股間に手をやりながら、もう耐えられないと言った表情で訴えた。
「なんだ、紗理奈。自分で言い始めたんじゃないか。」
「そうなんだけどさあ。やっぱり刺激的っていうか。過激っていうか。」
「濡れて来ちゃった?」
「オナニーでもしてればいいんじゃない?」
「美奈子。あなた、冷たいわね。」
「いっつもペニスを咥えこんでるとガバガバオマ〇コになっちゃうわよ。」
「酷〜い。美奈子に言われるとは思わなかったわ〜。」
真顔になって美奈子を睨みつける紗理奈に、真奈美がいつものように声をかけた。
「大丈夫だって。ちゃんと鍛えてればガバガバにはならないって。
いつかとしパパが言ってたよ。」
「そうね。それにお母様愛用のローションもあるからね。」
「じゃあ、大丈夫ってことでこっちも始めちゃおうよ。」
「さっきみたいに流れに任せるの?」
「わ〜〜〜。じゃんけんできめようよ〜〜。」
「真奈美ちゃん。なに、期待してるの?」
「真奈美の期待は〜。真奈美と〜、とし君と〜、潤一さんが一緒で〜。」
真奈美は時としてまるで周りの状況を考えていないかのように、
自分の一番したいことをそのまま言葉にすることがあるのだ。
ただ不思議と真奈美が言ったことに対して周りの人間は腹を立てず、
なるほど、それもありかと考えてしまうところがあった。
敵を作らない。
真奈美自身、それを意識して生活してきたわけではないのだが、
そのあたりは親のしつけの部分なのか、それとも天性のものなのか。
真奈美本人はもちろん、親である香澄も雅和さえも判らなかった。
「なに、それ?
真奈美ちゃん、なんだかんだ言いながら男二人を独占したいんじゃん。」
「で?わたしと美奈子はレズってろってこと?」
「でも、美奈子お姉ちゃんと紗理奈おねえちゃんのレズも、
真奈美、奇麗だなって思ったよ。二人とも気を失うまでずっとやってたし。」
「うん。確かに、紗理奈と美奈子のレズに際限はないものな。」
「じゃあ、決定。真奈美はとし君と潤一さん。
紗理奈おねえちゃんと美奈子おねえちゃんは、際限のないレズの再現!」
「でた〜。真奈美ちゃん渾身の同音異義語ギャグ〜。」
真奈美は周りの反応が楽しくて仕方なかった。
(紗理奈お姉ちゃんも、美奈子お姉ちゃんも、潤一さんも、もちろんとし君も、
真奈美、だ〜い好き。)
そして今、その、真奈美の大好きな仲間に、
雅和、香澄、征爾、麗子の4人が加わろうとしている。
もちろん真奈美にとってその一人一人は、
もう既にとても大切な、大好きな人物であった。
そして今、この4人は、一人一人のバラバラな存在でもなく、
それぞれが夫婦という存在でもなく、
4人一組の夫婦のような存在になろうとしていた。
真奈美にとっては、実の両親が公認する、
二人目の父親、母親が生まれようとしているのようなものなのだ。
「真奈美ちゃん、とっても嬉しそうだね。」
「うん。とっても。だって、みんなが仲良くなれるって、最高だよ。」
「うん。そうだよね。」
「その仲がいい人たちが、一番いい方法で、もっと仲良くなれる。
それが、セックスなんでしょ?」
真奈美の言葉に周りにいる全員が頷いた。
(真奈美ちゃん。なんて純粋なんだろう。
この仲間たちを離れるようなことがあった時、
真奈美ちゃん、果たしてちゃんとやっていけるのかなあ。)
それは、真奈美のことを実の妹以上に気にかけ、実の肉親のように理解している、
もしかすると、敏明以上に真奈美のことを理解している紗理奈ならではの心配だった。
「ねえ、紗理奈おねえちゃん。」
「ん?どうしたの?真奈美ちゃん。」
「うん。なんかね。真奈美、眠たくなっちゃった。」
「え?ほんと?これからお父さんやお母さんたち、いよいよ本当に……。」
「うん。それはわかってるし、真奈美も、ちゃんと見ていたいんだけどさ。
なんか、とっても、眠くって……。」
真奈美はそう言うと、ベッドの縁にもたれるようにして、そのまま眠ってしまった。
「あらあら。真奈美ちゃん、朝からいろいろとあったから、疲れちゃったのかな。」
「うん。しばらくそっとしておいてあげよう。
今日のパーティーのこと、一番楽しみにしていて、一番心配していたの、
真奈美ちゃんだものね。
みんなが仲良くなって、上手くいきそうだと思って、安心しちゃったのかもよ。」
「そうだよな。時々驚かされるくらい、大人びたことを言ったりもするけれど、
まだまだ15歳だもんな。」
「潤一。あなたが15歳の時って、どんなだったの?」
「うわ〜。それを聞く?だったら、紗理奈が15歳の時はどうだったんだよ。」
「そうね。今と同じくらいに聡明だったわ。」
「シー。真奈美ちゃん、本当に寝ちゃったよ。」
「ホントだ。どうしようか。ここで始めたら、真奈美ちゃん、起きちゃうよ。」
「と言っても、あっちのベッドは、夫婦水入らずにしてあげたいしね。」
「じゃあさあ。思い切って、青い空の下、ってどう?」
「青い空の下?なに、それ?」
「2階のベランダから、はしごをかけて、屋上に出る。」
「屋上?わ〜。すげ〜。」
「えっ?そんなの、いつ、出来た?」
「ベランダにはしごを置いただけよ。ただ、はしごを上るとなると、若者限定。」
「なるほど。周りに高い建物はないし、誰にも見られる心配もない。」
「そして、見ているのは青い空と太陽だけ。」