香澄の本性-1
香澄の目の前にひときわ大きな部屋が広がった。
部屋の中央にはかなりのサイズのベッドが置かれ、
そこには真奈美と雅和、そして潤一と紗理奈の姿があった。
4人とも全裸であったが、香澄は今となっては何の違和感も感じなかった。
もっとも、自分自身も全裸で、娘と夫の前に登場したのである。
香澄の肩には征爾の手が置かれ、香澄の手は征爾の股間へと伸びていた。
征爾も、夫である雅和の目など全く気にする様子もなく、
時折肩口から首、そして胸の方へと手を伸ばしながら、香澄の耳元にささやきかけた。
「4人とも、おとなしい出迎えでしたね。いろいろと危惧したのが無意味でした。」
「ええ。拍子抜けと言えばそうですが、ちょっと安心もしました。」
「ご主人が真奈美ちゃんとしてないからですか?」
「いえ、4人ともにそれぞれ、幸せそうな笑顔だからです。」
「確かに。」
征爾は4人を見渡した後、後ろを振り返り、麗子たちに声をかけた。
「麗子。さあ、本当の意味での鈴木家、生野家のご対面だ。
この日をどれほど待っていたことか。
ようやく、本当の意味での裸の付き合いが始まる。」
「ええ。あなたの思いも、わたしの思いもようやく実現しますね。
紗理奈、美奈子、敏明、そして潤一君も含めた鈴木家と、
雅和さん、香澄さん、真奈美ちゃんの生野さん一家がこれで一つになるんですね。」
「ああ。そうだ。美奈子。お前も、もう何も遠慮しなくていい。
自分の思う通りに行動しなさい。」
「いいのですか?」
美奈子は突然、父親から自由な行動を許可され、正直驚いたようだった。
「ああ。お前もいろいろとあったが、見事に乗り越えた。
いじめから逃げるためのМでもなければ、仕返しをするためのSでもない。
お前はお前自身の思いのままに、その道を使い分けられるようになった。
もう大丈夫だ。自信をもって、自由に、思う通りに生きなさい。」
美奈子の顔に驚きと共に、喜びの表情が溢れてくる。
「はい。でも、お父様との関係は?」
「ああ。お前が望む時があれば、それは別だが、
もう、日常的に隷従する必要はない。
敏明とも、潤一とも、わたしの許可を求めずに身体を交えるがいい。
いや、あるいは社会に出て、自分の好きな相手を見つけるのもいいだろう。」
「お父様。ありがとう。」
「お前も苦労したからな。今日はお前も十分に楽しむといいだろう。」
「はい。やっと、真奈美ちゃんのことも、本当の妹のように可愛がってあげられます。」
「ああ、そうだったな。親しいというのは肉体関係ばかりではない。
言葉や行動、心の通い合い、これからはそんな付き合いもできるはずだ。」
美奈子は父親の言葉を背中で聞きながら、紗理奈たちのいるベッドへと向かった。
「あなた。お話が長くなると。雅和さんたちがお待ちですわ。」
麗子が征爾の長話をたしなめた。
「ああ、そうだった。いや、お待たせしました。」
雅和は美奈子と入れ替わるようにベッドから降り、征爾を迎えた。
「いえ。いろいろとありがとうございました。」
雅和は手を差し出し、征爾に握手を求めた。
「いや、もう、そういった挨拶は本当に無しにしましょう。
それよりも、真奈美ちゃんとはまだ?」
「真奈美と?あ、いや、お気にかけていただいていましたか。」
「いや、わたしよりも誰よりも、奥様が。」
「香澄が?ああ、やはりそうでしたか。
当然と言えば当然でしょう。
いくら道理を説かれたとはいっても、
現実にはなかなか納得できるものではないでしょうからね。」
雅和は自分が娘と関係を持つことを、征爾の説得にもかかわらず、
香澄がなかなか承諾しなかったのだろうと思っているのだ。
「いや、香澄さんは、そうやってあなたが躊躇して、
真奈美ちゃんをがっかりさせるのではないかと心配されていたのです。」
「真奈美ががっかりする?」
「ええ。真奈美ちゃんにとってあなたは、性の開拓者なんでしょうね。
物心ついた時に見た、あなた方ご夫婦のセックス。
その激しさが真奈美ちゃんの潜在意識に強く残ったのだと思います。
そして、真奈美ちゃんは心のどこかでずっとあなたを求めていた。
性の原点であるあなたとのセックスをね。」
征爾の言葉に雅和は少なからず驚いた顔をして征爾を見た。
「真奈美の性の原点がわたし、ですか?」
「今は論ずるときではありません。
香澄さんの危惧が現実のものとならないうちに、
早く真奈美ちゃんを抱いて、安心させてあげてください。」
征爾の後ろに隠れるようにしていた香澄が顔をのぞかせ、言った。
「あなた。わたしからもお願いします。真奈美の望みを叶えてあげて。」
雅和は香澄の目の奥の変化も見逃すまいと、香澄をまっすぐに見つめた。
「香澄。君はいいのかい?」
「真奈美があなたに抱かれること?ええ、もちろんよ。
それが真奈美の望みであり、あなたの望みでもあるのなら。」
「君は本当は望んではいないのでは?」
「いいえ。わたしもそれを望んでいるわ。
そしてできるなら、わたしの見ているその目の前で、
真奈美をたっぷりと満足させてあげて欲しいの。」
「香澄。」
雅和は香澄を抱き寄せようと手を出したが香澄はそれをするりとかわし続けた。
「それから、あなた。
その代わりに、なんて言うと、まるで交換条件のように聞こえてしまうわね。」
「香澄。君はそれ以上何も言わなくていい。次はボクの願いを聞いてくれ。」
「あなたの願い?真奈美のことではなくて?」
「ああ。香澄。君自身のことだ。」
「わたし自身?」
「ああ。香澄。もう、敏明君とは……したのかい?」
「えっ?あ、ええ、そ、そう、よ。した、わ。ごめんなさい。」