香澄の本性-2
「そうか……。」
香澄は雅和に身体を寄せると、雅和に縋るような眼差しで言った。
「あなた、怒ってるの?」
「いや、怒るようなことじゃない。謝る必要もない。
と言うよりも、謝られては困るんだ。」
「許せないっていうこと?」
香澄の顔に明らかに不安な表情が浮かんだ。
「香澄。君は若い頃から、ぼくたちがセックスしているところを、
人に見られるスリルを味わうのが好きだったよねえ。
それは今でも変わりないのかい?」
「人に見られるスリル……それは、わたしの露出癖のこと?」
「さあ。あれを露出と言うべきものなのかどうかはわからない。
だが、それだけじゃない。
ボクの目の前で、行きずりの男たちにレイプされながら歓喜の声を上げていた君だ。
今でも、ボクが見ている前で、誰かに抱かれたいと思っているんじゃないのかい?」
「あなた……。」
「香澄。もし君が嫌でないのなら……。
今、ボクの目の前で……。征爾さんでも、敏明君でも、ここにいる潤一君でも、
いや、3人全員とでもいい、抱かれるところを見せてくれないか?」
「あなた……。」
「もちろん、その後にはボクに抱かせてくれ。
嫉妬に狂った亭主のストレスを全部ぶつけてあげるよ。」
香澄は雅和に抱きつき、その首に手を回しながら激しくキスをした。
雅和は香澄の唇から舌をねじ込ませ、香澄の舌を吸いながら身体中を撫ぜ回す。
香澄の手は自然と雅和の、勃起したまま脈動し続けているペニスを握りしめた。
「わかったわ、あなた。わたしも、あなたが猛烈に嫉妬して、
我慢できずにわたしに殴りかかりたくなるほど、挑発してあげる。」
雅和からゆっくりと身体を離すと、香澄は雅和の股間を改めて見つめながら言った。
「ああ。でも、真奈美には少し刺激が強すぎるかもしれないがね。」
「大丈夫よ、真奈美は。そんな心配をする必要はないわ。
真奈美の方が、もっと刺激的なことをわたしたちに見せてくれるかもしれないわ。」
「じゃあ、せいぜい娘に負けないように、
君もエロの限りを尽くしてボクを狂わせてくれ。」
「あなたも、真奈美を見くびると、父親の面目が丸つぶれになるわよ。」
「ああ。それは十分にわかっているよ。」
「ねえ、あなた。」
「ん?」
「いきなり、の方が刺激的だったかしら?」
「ああ。そうかもしれないが、
ボクにとっては香澄が前もって言ってくれてよかったと思うよ。」
「ありがとう。あなたも、真奈美とするのを待ってくれて、ありがとう。」
「いや、君の意見も聞かずにできる事じゃないからね。」
「じゃあ、わたし……。」
「ああ、また後で。」
「真奈美をお願いね。」
「ああ。任せておけ。」
そう言うと雅和は香澄の乳首を軽く摘まむようなしぐさを見せ、離れていった。
麗子が待ち構えていたかのように雅和に抱き付き、耳元で何かささやいた。
雅和は征爾に目をやると、麗子の肩を抱きながら子どもたちの方へ近づいていく。
「じゃあ、雅和さんはしばらく子どもたちと一緒にいてください。
わたしは乾杯の用意をしてきますから。」
麗子は雅和にキスをしながらその股間をしばらく握りしめ、カウンターへ向かった。
気が付くと香澄の後ろには征爾が立っていた。
「香澄さん。いいご主人をお持ちだ。」
「ありがとうございます。」
「では、雅和さんの嫉妬心を思い切り煽るって差し上げましょう。
そのためには多少、過激な方がいいかもしれない。
香澄さん、さっきのように拒否したり反抗したりしてもかまいませんからね。」
「そうですね。でも、レイプまがいのことをされるのも刺激的ではありますが、
真奈美が主人に夢中になれないのも可哀そうですから…。」
香澄が抱き付こうとするのを軽く制するようにしながら征爾が言った。
「香澄さん。正直、まだあなたは無理をしているように見えます。」
「無理を?ですか?いえ、そんなことはないと思いますが。」
香澄は征爾の顔を意外だという表情で見た。
そんな香澄を諭すように征爾は言葉を続ける。
「あなたの中にはまだ母親の部分が残っています。
親として、大人として、女の先輩としての自覚とでも言いましょうか。
娘さんに見せなければいけない姿と見せてはいけない姿を分けていらっしゃる。」
「そう、でしょうか。」
「真奈美ちゃんに、ご自身がレイプまがいのことをされている場面を見せたたら、
真奈美ちゃんが夢中になれなくて可哀そうだと。」
「あ、はい。確かに。」
「それさえも、やはり親としての発言です。」
「親として、の発言はいけませんか?」
「いえ。もちろん、親としては当然の配慮です。
でも、香澄さんの配慮はむしろ遠慮に近い。」
「遠慮?配慮と遠慮は、それほどまでに違うものですか?」
「ここで言葉の解釈をお話ししても意味がない。
簡単に言えば香澄さんは、まだ《自分がどう思われるか》を大切にしてらっしゃる。」
「自分が大事、と言うことですか?」