副総監-1
19時30分手前、ヘリは警視庁の屋上の発着場に到着した。出迎えは無用だと伝えてあるが、いつも残っている各部の部長が何人か出迎えに来る。今日は警備部の細川部長と生活安全部の輪島部長、そして神田彩香が出迎えに来た。
「だから出迎えはいいのにぃ。」
愛想良くそう言った若菜に、そんな訳にはいかないと答える2人の部長。その2人の後ろからヘリから降りてくる若菜の他の同乗者に目を奪われる彩香。降りてくるマギーにどんどん目が丸くなって行く。
「マ…、マ…、マギー様…!」
そう呟いた彩香に怪訝そうな顔で振り向く細川と輪島。
「ん?どうした神田?」
目を見開き口を両手で押さえ体を震わせている。若菜はマギーが一緒に来る事を彩香には言っていなかった。当然驚かせようと思っていたからだ。
「こちら千城県警のマギー。ご存知ですよね??」
細川と輪島は、あー、これがマギーかと言った様子で答える。
「初めまして。噂は聞いてるよ?」
握手を求めてくる細川に謙遜気味に右手を差し出す。
「千城県警の菜月マーガレットです。宜しくお願いします。」
続いて輪島と握手を交わす。
「噂通りの美人だね!しかもかなり優秀とか!」
「いえいえ、まだまだです。」
2人に挨拶を終えると、背後に身を隠す彩香に目を向ける。しかし彩香は輪島の背中にピタリと貼りつき、何かに怯えるように身を隠していた。
「??」
不審に思うマギー。輪島が挨拶するように促す。
「ほら神田。挨拶しなさい。」
しかし彩香は声を上擦らせながら輪島の背後に隠れる。
「無理!!無理無理!!」
「ど、どうしてだ!?」
「だって…マギー様が…マギー様が…本物が…!」
「はっ!?お前なに言ってんだ??」
「だから本物のマギー様が…」
そう言って顔を出しマギーを見る。
「キャー!!ヤバいヤバいヤバいヤバい!!」
そんな彩香にマギーは若菜を見る。
「フフ、言ってなかったけど、彩香ちゃんはマギーの大ファンなの。熱狂的な、ね。前から会わせろって言われてたんだけど機会がなくてさー。」
そう言った若菜に彩香が言った。
「昼間電話した時来るって言ってなかったじゃないですか!わざとですよね!!意地悪っっ!!」
若菜には攻撃的な口調でそう言った彩香。そんな自分を見て面白そうに笑う若菜がムカつく。
「ほら、ご要望通りに連れてきてあげたんだからちゃんと挨拶しなさいよ、彩香ちゃん♪」
若菜がそう言うと輪島に体を押されマギーの正面に立たされる。
直立不動のまま目を上げると、笑みを浮かべるマギーの顔が見えた。
「初めまして、菜月マーガレットです。」
そう言って手を取るマギーに彩香の興奮は最高潮に高まる。
「あ………」
意識がクラッとした。足から力が抜ける彩香を慌てて支えるマギー。
「だ、大丈夫??」
「もうダメ…」
まるで恋人に抱き抱えられているかのような幸せそうな彩香を見てマギーは苦笑いするのであった。