副総監-8
「田口徹が所持していた麻薬は10トンにものぼっていた。現金は2億。最終的には白川歩美さんが奪い取り保管していた。最終的にサーガ事件が解決した後、警察に全て受け渡してくれた。その麻薬と現金はこの警視庁で保管しているはず。今まで気にもしなかったけど、その麻薬と現金はそのまま保管されてるんだろうか…」
若菜は顎を指で摘みながら険しい表情でそう言った。
「もしそれが持ち出されていたら大変な事になりますね。」
「ええ。大変な事どこじゃないわ…。」
もしそれが事実なら世間にどれだけ非難されるか分からないし、警察の信頼は大きく揺らぐ事になりかねない。その重大さは3人には良く理解出来た。
「私、隙を見て調べましょうか?」
彩香が言った。
「それはダメ。さっき豪ちゃんが言ったけど、麻薬がらみは大きな危険が降りかかるから。ストレートに言えば命を狙われるハメになる。いい、彩香ちゃん、絶対にダメだからね?」
「わ、分かりました。」
「いいタイミングで吉川君が来るから彼に頼むわ?彼は麻薬がらみの危険から身を守る術を心得ているから。」
「…」
マギーはさとみの事を思うと吉川に危険な橋を渡って欲しくはなかった。しかし特命捜査対策室で一緒に働き、吉川が危険な捜査に情熱を燃やすタイプだと言う事は知っている。誰が適役かと言えば吉川以外には考えられなかった?
「まずは白川歩美さんが受け渡してくれた時の麻薬の正確な量と金額を調べておいて?捜査資料に記されてるわよね?」
「おそらく。了解です。」
彩香は緊張気味に答えた。
「保管室に入るセキュリティコードを知ってるのは自分と片山さんと刑事部長の渡嘉敷部長よね?私でないとすると残りの2人のどちらかがって話になるわね。彩香ちゃん、くれぐれも動きを悟られないようにね?」
「分かりました。」
「あと、私は常に犯人の内通者の存在を疑ってる。だから誰に対しても警戒心を持つように。いいわね?」
「はい。」
いよいよ糸口が掴めそうな状況になって来た。効果的な糸を引けば捜査は一気に進展する可能性がある。ただし糸が途中で切れてしまってはまた事件を見失う事になる。慎重に、慎重に捜査を続けていかなければならない。
「っと、もう23時ね。そろそろ戻ろうか。」
若菜が時計を見て言った。
「えー!私もっとマギー様と話したいですぅ。」
「事件が終わったらデートでも何でもさせてあげるわよ。」
「じゃあ事件が終わったらランチ行きませんか??」
「うん。」
「約束ですよ!」
そんな会話をした後、若菜とマギーは、犯罪者が蠢く夜の東京の上空を飛び千城に戻って行った。