副総監-3
「じゃ、報告聞こうか。」
ブレイクタイムを終え、気を取り直し捜査モードに入る。彩香はパソコンにまとめた資料を見ながら報告する。
「まずは片山副総監の経歴ですが、昭和40年に世田谷で出生、世田谷幼稚園から世田谷小学校、世田谷中学を経て帝国高校へ入学、大日本文化大学から警視庁刑事部に。能力は高くリーダーシップもあり、数多くの事件を手掛けて来ました。警視庁での経歴を見る限り輝かしいものばかりです。28歳の時に大学時代から交際していた品川英美子と結婚、現在55歳で20歳の娘と18歳の息子の4人家族です。家庭は順風満帆と言った所でしょうか。何の問題もありません。ご存知の通り誰からも信頼される素晴らしい人格者です。」
若菜が頷く。
「そうね。私もそう思う。」
そう言った。
「片山副総監の父親は製薬会社に勤めていた力蔵氏。ごく普通のサラリーマンで、既に他界しております。」
「そっか、警察とは関係なさそうね。」
警察の血筋だと予想していた読みが外れた。が、彩香の口から若菜の落胆を奮い立たせる言葉が飛び出しす。
「しかしながら力蔵氏の妻、つまり片山副総監の母は警察庁に勤めていた刑事でした。旧姓長山佳苗。そして長山佳苗の父親、長山晋は警視庁に在籍してました。」
「ホント??」
「はい。特に長山晋は非常に優秀で、次期警視総監になると見られていましたが、大方の予想に反し警視総監になる事はありませんでした。その時に警視総監になったのは…」
若菜が前のめりになり興奮気味に言った。
「木田康介!!」
彩香は驚いた。
「な、何で知ってるんですか…?」
「フフ、よしよし、繋がったわ。そうかそうか、片山さんと木田康介は繋がってたのか…。ねぇ、どうして総監確実だと言われていた長山晋が落選して木田康介が総監になれたのかなー?長山晋を蹴落とすだけの理由、根拠って何だったのかは分かった?」
「まだそこまでは分からないんですが、木田康介には黒い噂が絶えなかったと言うので、何か裏があるような気がします。」
「うん、じゃあ明日それを調べてくれるかな?」
「分かりました。」
それから、片山以外に木田康介と接点がある人間はいないかを調べた結果を若菜に報告した彩香。
「となると、片山さんには、義理の父親がもし卑怯な手で警視総監の座を奪われたのならば、長山晋の復讐をする理由はあるって訳よね。木田康介と高島謙也への復讐をする理由がある、と。」
ただし片山が法律を破ってまで復讐を成し遂げるような悪行を働くとは思えない。ただ単に復讐するという短略的なものではないような気はするのであった。