自覚と責任-5
佐野と笹田が席に戻ると、早速捜査の方針の議題に移る。マギーは浮かれる事も肩に力を入れ過ぎる事もなく、しっかりとした口調で落ち着きを見せていた。
「先ほどまで、佐川明子が張り付けられてから今までの捜査状況を確認しました。加えて、これは警視総監と内密に調べているのですが、先日総監から話が出た50年程前の府中3億円事件での犯人の可能性が高い人物が浮上しました。」
会議室はどよめいた。膨大な数の捜査員を導入し捜査した挙句、結局見つけられずに時効を迎えた迷宮入りの大事件の犯人らしき人物が見つかったとなれば世間的にも大騒ぎになるだろう。一体誰だ??そう騒めき合った。
「それは誰なんだ!?」
誰からともなくそんな声がマギーに向けられた。
「それは…、現千城県知事で元目立の社長…」
そこまで言って分からない者はいなかった。
「た、高島謙也!?」
会議室が揺れる程のどよめきが起きる。驚く声はあったが、疑う声はなかった。若菜が内密に調べて出した答えだ。何の根拠もなく名指しするはずはないのを皆んな知っているからだ。どよめきは暫く収まらなかった。
マギーは何故高島謙也が3億を強奪したのか、その理由を言った。そして今、横芝を弱体化させ、目立が吸収する事により高島謙也と木田康介の坂上裕之への復讐を果たす、それが目的である所まで伝えた。仮説の域は出ない話だが、十分に納得でき、あり得る話であるように伝わった。
「という仮説を元に、私達は3億円事件を再び調べているところです。当時警視総監であった木田康介、坂上裕之、木田と別れ坂上と結婚した坂上秀美、そして息子の高島謙也。そこを洗い始めた所です。そして県知事と城南市長…、この2人は捜査で繋がっている事がわかってます。2人がビッツコインを扱っている事も。佐川明子や小渕愛子が全裸張り付けにされた事件も、木田康介と高島謙也の坂下裕之への復讐の結末の過程で起きたものだと考えてます。復讐が終われば容疑者はその思惑を消し去り永遠に全てを謎のままにしてしまう事でしょう。憎しみなき犯行と呼ばれた3億円事件ですが、取調べを苦にして自殺した者もいる、捜査が苦しくて自殺した刑事もいる。憎しみなき犯行などあり得ない。人生を狂わされた人間はたくさんいたのが現実です。私達が真実を暴き、例え時効とは言え、犯人に罪の意識を持たせなければ本当の平和は来ないと思います。先輩達の無念は今、私達が晴らさずして誰が晴らすのでしょうか。私は絶対に全てを解明させます。」
マギーの言葉に全員が頷いた。