自覚と責任-3
「今、私はどうしてもこの事件を解決させたいんです。この千城を舞台で、また市民の、県民の平和を脅かしかねないこの事件を、私は解決したいんです。それだけです。そんな私のワガママな願望は自分1人では叶えられません。皆さんのお力添えがあってこそ可能になると思ってるんです。でもその願いは皆さんも同じはずです。私は皆さんの上に立ち指揮を取るつもりはありません。例えば皆さんの息子さん、娘さんが夢を叶えようとしている時、なんとか力になってやろうって思いますよね??だから私を娘だと思って、娘が夢を叶えようとしてるんだ、しょうがない、手伝ってやるか!、と思っていただけませんでしょうか。志は一緒のはずです。悪を憎む志は同じはずです。男でも女でも、私たちは同じ刑事です。女の私が皆様に敵わない事はたくさんありますが、悪を憎む気持ちだけは決して皆様に負けないつもりです。私はこの事件を解決に導きたいんです!死ぬ気で頑張ります。だから娘を思うような気持ちで、お力添えをいただき、一緒に戦って欲しいんです。その一心、しかありません。」
マギーは力強くそう言った。会議室は静まり返っていた。そして何人かが顔を見合わせて反応を見ているのが分かった。
そんな中、佐野がスッと立ち上がりマギーの元へ強面を険しくしたまま歩み寄る。会議室に緊張が走る。そしてポケットに手を突っ込んだままマギーを睨みつける。
「お前…」
誰もが佐野が暴れ始めると思った。が…。
「娘だと思えとか、卑怯だぞ??」
そう言った佐野の強面が少し和らいでいるような気がした。
「俺には本当に娘がいてな、サッカーしてんだけど、将来なでしこジャパンに入るって言って頑張ってんだよ。そんな娘にスクールに通いたい、ボールが欲しい、スパイクが欲しい、試合を観に行きたい、そう言われるとついつい何とかしてやりたくなっちゃうんだよな、親は。そんな気持ちでお前を助けろ、と?」
マギーは躊躇いなく言った。
「はい。」
と。そして次に響いたのは佐野の恫喝ではなく笑い声だった。
「ははは!!やられたよ。お前を娘だと思って考えたらよ、不思議と手伝ってやろうかなって気になったよ。何より自分の弱さを認める勇気が気に入った。なかなか出来るものじゃない。お前は俺が思っていたような生意気な女じゃなかったようだ。そうだ、刑事としての志は同じだ。ついでに俺の弱さも暴露しよう。俺は考えるのが苦手な馬鹿だ。しかし体力には自信がある。だから策はお前に任せる。そして俺が動き回る。俺の足りないとこをお前が補う。俺だけじゃない、みんなが足りない所をフォローしあってこの事件を解決させようじゃないか!」
佐野が右手を差し出した。マギーは満面の笑みで応える。
「ありがとうございます!」
佐野の強面が崩れる。
「ちっ、いい笑顔しやがるなっ!」
そう言って佐野は頭をかいて照れ臭そうな顔をしたのであった。