最後の迷い-2
征爾の表情が妙に強張っているのを感じた香澄はハタと気が付いた。
「征爾さん。失礼ですが何か勘違いされていませんか?」
「勘違い、ですか?」
「はい。わたしが助けに行きたいと言っているのは、
真奈美が父親に対して失望し、悲しい気持ちになっていないかが心配なのです。」
「ええ。わかります。」
「う〜ん。どうお話すればわかって頂けるのかしら。
とにかく、今すぐ、その場に、早く、ああ、その場にいたいんです。」
「わかりました。では、すぐに行って止めましょう。」
「そうじゃないんです。
真奈美は父親とようやくセックスできることを大いに期待し、
まさにその時を迎えようとしている。
もしも、そこで主人が躊躇して、真奈美を遠ざけようとしたりしていたら……。
そんな主人の背中を押してやらないと、真奈美が悲しみます。」
「ご主人の背中を押す、ですか?」
「実の娘です。血のつながった娘です。
自分の娘と関係をもつとなったら、やはり普通は躊躇するものでしょ?
あ、今言っている普通とは……。」
「大丈夫ですよ、香澄さん。気を遣わなかわなくても。」
「はい。ごめんなさい。躊躇すると思うんです。」
「当然だと思います。」
「でも、その迷いが、せっかく二人の間に出来上がった、
父娘、身体を合せることでさらに父娘の愛情を深めようという雰囲気を、
壊してしまうかもしれない……。
せっかく燃え上がった炎が消えかけてしまうと、
次に燃え上がるのにはいろいろと……。」
「ご主人が、あれこれ考え始める前に、と言うことですか?」
「はい。真奈美はおそらく父親に抱かれたい一心でしょうから。」
「それで躊躇しているであろうご主人の背中を押してやりたいということですか。」
「はい。でも、もしも、もしも主人が、
すぐに真奈美の願いを聞き入れてくれているのなら、
それこそ一刻も早くその場に行って、間近で見たいんです。」
「見たい、と。」
「ええ。征爾さんならわかって頂けると思います。
わたし、見たいんです。
真奈美が主人のペニスをしゃぶっているところを。
真奈美が父親と交わっているところを。
主人が真奈美の股間に頭を突っ込んで、舐め回している姿を。
ああ、早く、早く見させてください。見に行かせてください。」
「そこまで決心がつきましたか。」
「ええ。でもそれだけじゃありません。
ここから先は、征爾さんへのお願いも含めてなんですけど。
わたし、さっき、どっちが刺激的なのかも考えたんです。」
「どっちが刺激的、とおっしゃいますと?」
「そうですね。
主人にとって刺激的なのはどんなわたしを見せる事かということも考えました。
自分から他の男を求める妻の方か、無理やりに置かされる妻の方か。
でもそれ以上に自分自身が何をされるのが一番刺激的なのかも考えたんです。
征爾さんに鞭で打たれながら。
それで、ああ、こういうのも悪くないなとも思ったんです。
でも、真奈美の目の前で鞭に打たれるのはふさわしくないとも思ったんです。
真奈美にはまだこういう刺激は必要ないのではないかって。
あの子はノーマルなプレイだけで十分に喜びを知ることができるんだろうって。
それよりも、きちんと対面して、お互いの気持ちを分かったうえで、
とし君に抱かれたり、征爾さんに抱かれたりした方が、
わたしたち家族にとっては刺激的と言うよりも、自然かなって。」
「なるほど。ご家族にとっての一番自然な方法を選びましたか。
それもいいかもしれませんね。」
「ただ、あちらのお部屋で、誰と誰がどうなっているかによっては、
その表現の仕方は変わるかもしれませんが。」
「わかりました。それも承知しました。香澄さんが納得する形が一番ですから。
じゃあ、そろそろ合流しましょうか。」