高島美琴-5
上品に染められたブラウンの髪は肩より少し長く、内巻きでフワッとしている。顔は凛々しくもあり、しかし男をすぐにデレっとさせてしまうであろう可愛さを兼ね備えている。きっと対面したら舞い上がってしまいそうな美人だ。確かに若い女には備わっていない色気は30歳を超えた熟れた女を感じさせる。
「全然ヤレるな♪」
杉山はマギーに聞かれたら絶対に殺されてしまうであろう言葉をつい溢してしまった。ふと我に返り、誰かに聞かれていないかキョロキョロする杉山。
(なーんか捜査が楽しみになって来た♪)
思わず心を弾ませてしまう杉山であった。
「へー、東京に店舗が多い割には本社が千城なんだな。机波市にあるんだ。本社の下に1号店か。ちょっと今から行ってこようかな。」
城南市から高速で1時間もあれば行ける。杉山は若菜に許可を取りリグレッド本社に向かうのであった。
常磐道を走り圏央道に入り机波中央インターで降りる。そして県道を走り街中に入ると、想像以上に栄えている事が分かった。
「そっか、つく波エクスプレスで1時間で東京に行けるんだもんな。ベッドタウンとしてかなりの人口がいるって訳か。」
そう思ってながらナビ通りに運転すると5階建のリグレッド本社が見えた。駐車場に車を停める。
「…いくらなんでも俺がネイルサロンに入ったら浮くよな…。あ、でも間違った振りして入ってみようかな…。」
そう思ったのは、中には働く何人かのキレイなオネーサマが見えたからだ。杉山は何の躊躇いもなく、そして何の目的も持たずに一階の1号店に入って行った。
「いらっしゃいませー♪」
男の来客に不審な表情ひとつ浮かべず杉山を迎える店員達。すぐにボブカットのたまらないギャル系の店員が寄って来た。中に入った瞬間、女性の香水のいい匂いに思わずニヤついてしまう。そして、言わばエロいギャル店員にさらに顔をデレっとさせる。ネイルサロンに何の用だと思われるかと思ったが、ギャル店員を始め、他の店員もまるでそんな事など思ってもいないような対応に安心する。
「お客様、ネイルですか?」
首を少し傾げる仕草が可愛い。
「あっと…ですね、ネイルサロンって入った事がないからちょっと気になっちゃって思わず入ってしまいました。変ですよね、男が…」
そう言って頭をかく杉山に、ギャル店員は少し大袈裟に手を左右に振って答える。
「いえいえ!最近は男性のお客様も増えてるんですよ?ネイルペイントだけではなくて爪を磨きにいらっしゃる男性の方もいらっしゃいますし。」
そう言った後、顔を寄せて小声で言う。
「それに男性のお客様は1割にも満たないんで、来て頂けると嬉しいんです。個人的な♪」
思わせぶりな言葉に杉山は、イヤぁ〜、と言って照れてしまった。