犯人像-1
ミーティングが終わると石山、マギー、華英が本部長室に集まった。あれだけの熱弁をした割には普通に椅子に座りペットボトルのピーチティーを飲んでいた。石山も椅子に座る。マギーと華英はソファに座った。
「なかなか衝撃的な内容だったな。さすがに俺も言葉が出なかったよ。」
石山が言った。
「まだまだ隠蔽されてる事とかたくさんあったけど、全てを話すと刺激を受けて過激な行動を起こす奴らもいるかも知れないから程々にしといたのよ?」
「まだ何か書いてあったんですか?」
若菜はピーチティーを飲み干してペットボトルをゴミ箱に捨てて言った。
「まだ何か書いてあったも何も、真犯人の名前がしっかりと書かれてとわよ。」
「えっ!?」
これには石山も驚いた。大捜査の末に未解決事件となったこの3億円事件の犯人を、実は警察が掴んでいた事に驚きを隠せなかった。
「一説では警察官の息子だと…。その少年はバイクが好きで白バイにも詳しかったと。それに事件後、急に羽振りが良くなったとか…」
マギーがそう言うと若菜は微笑した。
「けど物的証拠が見つからなかった。しかも事件の一年後、彼は亡くなってるから、ドラマ性から考えれば彼を犯人に仕立てた方が盛り上がるわよね。」
「確かに怪しいけど、バイクが好きで白バイに詳しいだけで犯人扱いするには無理がある。羽振りが良くなったと言っても賭けで当たったのかも知れないし。強奪されたお金で羽振りが良くなったって言う証拠がないと。それに散々当時の刑事もそこらは調べたんだろうから、それでも証拠が出て来なかったって事は、違うのかな…」
顎を指でつまみ考え込むマギーに若菜は言った。
「でも、現金を強奪したのは彼だったわ?」
石山、マギー、華英は目を丸くする。
「えっ!?」
「金成和弘、彼が現金輸送車を襲い、3億円を強奪した犯人だと書いてあるわ?」
「え…でも証拠は全くなかったんですよね…?」
「証拠が出て来なかったんじゃなくて、全て揉み消したのよ。」
「え!?じゃあ初めから警察はその金成和弘って少年が犯人だと分かってたんですか!?」
「分かってたから彼が捕まらないよう、捕まらないよう、捜査をその方向に仕向けて行った。てか、金成和弘を庇うのではなく、ある人物が金成和弘を使って強奪事件を企てたのなら、また話は変わってくる、でしょ?」
「え!?」
驚きの連続だ。一体どんな闇が隠されているのか、何故か恐怖すら感じて来たのであった。