関与-2
「そしてあと一つ。華英ちゃん?」
「は、はい…」
「華英ちゃんが私達に相談なく単独で調べようとしたのはどいしてかな??」
「そ、それは…」
華英は答えづらそうな顔をする。しかしその質問が向けられたと言う事は、若菜は気づいているなとも思った。もうこれ以上勝手な捜査でみんなに迷惑をかけたくない。華英は重い口を開く。
「警察内部に犯人か…協力者がいると思ったからです。」
その言葉にみんなが驚いた。
「まさか…」
警察内部に裏切り者がいる…、信じたくはない、話しであった。
「湯島武史の時には渡辺麻耶、田口徹の時も内部にスパイがいた。その流れをついだ事件だとすると今回も警察内部に内通者がいてもおかしくはないわ。華英ちゃんが警察内部に内通者がいると思ったきっかけは何?」
「はい。サーガ事件の時に、西進ビル爆破により私は上司、渡辺智則さんが殉職しました。その爆発は佐川が真田を味方に引き込む為に仕組まれた爆発だったとされ、事件解決とともに捜査は終わりました。でも私は麻薬捜査をする中で聞いてしまったんです。あの爆発は佐川が真田を助けるための爆発ではなく、初めから渡辺さんを消す為に仕組まれた爆発で、佐川が仕組んだものではない、と。」
「えっ??」
捜査結果を覆すような言葉にみんな驚きを隠せなかった。
「私が覆面男達と争ってる時、あの輝樹があの爆発は渡辺さんを狙ってのものだとハッキリ言いました。私の聞いた噂は本当だったんだと確信しました。渡辺さんは千城県における麻薬捜査の指揮をとっていた刑事です。あの頃、大きなヤマを持っていました。あの爆発事件の前、もう少しで麻薬の出所を押さえられるかも知れない、そう言っていました。西進ビル爆発事件の時、麻薬がらみではないのに渡辺さんは積極的に先頭に立って指揮を執った事に私は違和感を覚えましたが、少し前、渡辺さんの家にお線香をあげに行った時、奥様が捜査ノートを見つけたと言う話になり、見せてもらった所、その西進ビルの名前が出て来たんです。西進不動産の抱える物件のどこかに違法薬物を大量に保管してある物件がある、そんなメモが残っていたんです。渡辺さんが爆発事件の前から西進ビルに目をつけていた事が分かったんです。あの日西進ビルで事件があり慌てて西進ビルに向かったと思われます。私はそれ自体が、渡辺さんは西進ビルにおびき寄せられたんだと思いました。西進の名前を耳にしたら必ず渡辺さんが来るはずだと犯人側は考えたんでしょう。あの日西進の名前を渡辺さんの耳に入れたのは警察です。わざと渡辺さんの耳に入れたのでしょう。だから私は警察内部に犯人の息がかかった人間がいるのではないかと言う疑いを持ったんです。」
華英は今まで誰にも話したことのない内容を初めて口にしたのであった。
「あの時渡辺さんに指揮をお願いしたのは私。その前から御洗署には渡辺さんと言う優秀な刑事がいると色んな刑事から聞いていたから渡辺さんに指揮をお願いしたの。そうなると私もまんまと誰かに西進不動産の捜査の指揮を渡辺さんに任せるよう意識させられたのかも知れない。そうだとしたら悔しいわ。」
自分に渡辺な名前を伝えてきた人物を残念ながら全てはっきりとは覚えていなかった。まさかそんな罠が張られていたとは当時気づかなかった若菜であった。