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THE 変人
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竜宮城-5

「私ね、海斗と過ごした時間は、実は夢だったんじゃないかって、いつも思ってたの。福岡に帰ってからも、精神的には前と何ら変わらなかった。前向きになったふりをしてたけど、全然変わらなかった。でも海斗と暮らした時間だけは、私は物凄く前向きだった。人間そこまで変われる訳がない、あれは夢だったんだ…、そういう気がしたんだ。でもそれは海斗や幸代さんが私のために親身になって助けてくれたからこんな弱い私でも前向きになれたんだって。私は人生を支えて貰う人を見誤ったんだなって。」
「でも瀬奈の人生が順風満帆だったら、きっと俺とは出会ってなかったはずさ。」
「そうだね。そうかも知れないね。私が病気でなかったら、きっと海斗と出会っててもここまでの関係にはならなかったかも知れないもんね。」
「そうゆー事。普通に出会ってても釣り好きの変な人ぐらいにしか思わなかったかも知れないだろ?」
「アハッ、そうだねー。出会ったその日に家に転がり込んで、その上セックスまでしちゃう仲にはならなかったかも知れないね。」
「…、俺な、瀬奈って無理にエッチなフリしてるだけだと思ってたけど、意外とスケベか??」
「スケベって響き、何か恥ずかしいから、せめて意外とエッチって事で♪」
舌をペロッと出して笑う瀬奈であった。
「て言うか…、海斗とするようになって私ね、セックスが好きになったの。ああ、愛されてる…、海斗としてる時、いつもそう感じられたの。気付いたら私も愛してた。するたびに愛情が深まってた。どんどん私は忘れかけてた女の喜びを取り戻していったの。だから大好きな海斗とセックスするのは私の喜びだったんだよ?」
「そ、そっか…ヘヘッ」
照れ臭そうに指で鼻を擦る海斗を見て瀬奈は笑った。

「海斗となら何をしても楽しかった。こんなに愛せる人と巡り合えるチャンスってそうはないと思うの。だからきっと私は病気になって良かったのかも知れない。結局結ばれなかったけど、海斗を愛した気持ちは本物だったから。私の愛の全てを注ぎ込めたから、何の後悔も…ないかな。」
「何言ってんだ??今ようやく結ばれたじゃないか。これから愛し合って行くんだろ??」
海斗がそう言うと、瀬奈は海斗の腕を離し、2、3歩離れて俯いて立った。

「ここは私の居場所。でも海斗の居場所はここじゃないから…」
そう言って切なそうな表情を浮かべて海斗を見つめた。
「俺もずっとここにいるよ。この竜宮城で瀬奈と暮らすよ!」
「それは出来ないの。」
「何でだよ!」
「竜宮城は、本当にあるって信じている者にしか存在しないの。海斗は信じてないよね?きっと今も半信半疑。」
「し、信じてるよ!マジで!」
しかし瀬奈の言う通りだ。それでも竜宮城が現実にある事は信じられなかった。
「海斗は私に触れていたから間違って竜宮城に来ただけ。本当なら私だけが来るはずだったの。だから海斗は長くはここにはいられないの。」
「そ、そんな…。いられるさ!信じればいいんだろ、信じれば!」
瀬奈はそんな海斗に向かって寂しそうに言った。
「無理なの、海斗。ごめん…」
瀬奈には別れを覚悟しているような表情が浮かんでいる。思わず胸が締め付けられてしまう海斗であった。


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