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THE 変人
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竜宮城-6

「私ね海斗と出会ってから過ごした時間が、一番私らしく生きられたって思うの。私はその思い出を胸に、これからずっと生きて行ける、そう思ってるの。」
話が一気に別れの方向に向き、海斗は慌てふためく。
「おいおい、待てよ!それじゃまるでもうここで別れるような言い草じゃないか!俺は嫌だぞ!?俺はここで一生瀬奈と暮らすんだ!」
瀬奈は首を何度か横に振る。
「それは出来ないの。海斗には海斗の人生がある。私の人生に巻き込む事はできない。」
「巻き込むとか、そんなんじゃなくて同じ人生を歩んで行きたいって言ってるんだ!」
「嬉しいけど、出来ないの…。ごめん…」
「謝らないで理由を教えてくれ!」
「それは…」
瀬奈は口を閉ざして俯いた。

「ごめん…、ごめんね、海斗…」
謝るばかりの瀬奈をこれ以上責め続けるのは酷だと感じた。海斗はそんな瀬奈をジッと見つめていた。
「私と違って海斗には待ってる人が大勢いる。海斗は自分の人生に戻るべきなの…」
瀬奈はそう言った瞬間、竜宮城の空の方を見つめて耳を澄ました。
「フフッ…」
瀬奈は穏やかに笑った。
「ど、どうした?」
不思議そうに聞いた海斗。瀬奈はにっこり笑った。
「ほら、聞こえない??海斗を呼ぶ声が。」
「声??」
海斗も耳を澄ます。すると遥か彼方から人の声らしき音が反響しながら聞こえてくる。どうやら海斗海斗と、名前を呼ばれているようだ。その声は次第に大きくなってきた。

「この声、幸代か??」
「そうね、幸代さんね♪」
「どうしたんだ、あんなに叫んで。」
その声はもはやドーム中に響き渡っていた。
「うるせーな!何なんだよ、あいつは!」
「とか言いながら、嬉しそうね♪」
「ん?そ、そんな事はないよ…」
「海斗には分かるでしょ?幸代さんがどんな気持ちで海斗の名前を叫んでるのか…」
「…、あ、ああ…」
「海斗が行くべき所は、どこ?」
海斗は瀬奈を見つめる。
「…、しょうがねーなぁ、一先ずは幸代を黙らせてくるか…」
「フフッ。そう言う事だよ、海斗。」
2人は目を合わせて微笑した。そして一呼吸置くと海斗は言った。
「じゃあまたな、瀬奈!」
「うん。ありがとう。海斗♪」
その瞬間、海斗の体はドームの天井から伸びてきた光に包まれる。そしてゆっくりと浮き上がり、海斗を空高く運んだ。瀬奈は小さくなって行く海斗を見て呟いた。
「永遠に愛してるよ、海斗」
と。


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