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THE 変人
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竜宮城-4

その灯りはまるで街を包むドームのような形をしていた。近づくにつれ、中の様子がぼんやりと見える。そこには琉球っぽい神殿のような建物が見える。ドームの端に真っ赤な鳥居がある。その鳥居からゆっくりと光が海斗に向かって伸びてくるのが見えた。
「何かUFOに攫われるみたいだな…」
しかし不思議と怖くは無かった。その光に攻撃性は全く感じなかった。むしろ溺れそうな自分に救いの手を伸ばしてくれているような、そんな優しさを感じる。光は海斗の体を包み込み、ドームの中へと導いて行った。

ドームのような灯りに触れた瞬間、眩いばかりの光が放たれた。思わず目を閉じる海斗。するとすぐ目の前から声が聞こえた。
「海斗♪」
海斗は声に反応しすぐに目を開ける。眩んでいた目が少しずつ戻り、目の前に立つ女性の姿をはっきりと映し出した。
「瀬奈…!」
海斗は咄嗟に瀬奈を抱きしめた。確かな感触だ。決して夢ではないと思えた。
「ほら、あったでしょ?竜宮城。」
「竜宮城…?」
海斗は辺りを見渡した。何とも神秘的な建物だろう。全てが輝いて見える。そしてそこには何の不安もなく穏やかに生活する人々がいた。幸せで楽しそうだ。天国とはこう言う事を言うのだろうな、そう思った。
「ここ、竜宮城なのか…?」
まだ信じられない。竜宮城など誰もが昔話に出てくる仮想の世界だと思っている筈だ。変人の海斗もそうだ。この世に本当に竜宮城があるなどとは思ってもいない。

「やっと見つけたの、竜宮城。」
今まで抱えていた苦悩が全て消え去ったかのような清々しい笑みを見せる瀬奈。海斗は思う、これが本当の瀬奈の姿なのだと。神秘的な竜宮城よりも、海斗は瀬奈の方に目を奪われていた。
「ん?どうしたの??」
自分の顔をジッと見つめる海斗を不思議に思った。海斗はいつもなら照れ隠しで誤魔化すが、今はそんな仕草が無駄に思えて素直な気持ちを口にする。
「今の瀬奈が本当の瀬奈なんだな。」
瀬奈の方が少し恥じらいを見せた。うん、と言って舌をペロッと出した。
「夢がかなったわ♪」
「夢??」
「うん。私ね、いつか海斗に本当の私を見て欲しいって思ってたの。いつか普通に戻って、変な病気を持ってない、本当の自分を見て欲しいって。今ようやく夢が叶ったわ♪」
「そっか。これが瀬奈か。」
「どーお?好きになれそう?それとも期待外れ?」
海斗は戯けて考え込む素振りを見せる。
「ま、悪くはないかな!」
「あー!何よー!」
「ハハハ!」
「ンフッ」
海斗の本音はしっかりと瀬奈に伝わっていた。瀬奈は海斗の腕に抱きつく。

「私、海斗の秘密、知ってるよ??」
「な、何の秘密?」
「ンフッ、海斗さぁ、出会ったあの嵐の日、死体だと思ってた私のオッパイ、何回か揉んだよね??」
「!?き、気付いてたのか!?」
「頭がポーってして朦朧としてたんだけど、あー、何か揉まれてるって思ったの。」
「あ、あれは…、し、心臓マッサージだよ!」
「えー?心臓マッサージってあんな手つきするんだっけー??」
「あれが一番効くんだよ…」
「へー、初めて知ったぁ。」
「忘れんなよ?」
「はーい。」

穏やかすぎる空間の中、そんな会話の一つ一つが幸せに感じるのであった。


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