恋心 第六章-1
あの日を境に奴は毎日のようにやってきた。
「私に近寄ると変な噂話がたつんじゃなかった?」
「オレは気にしないよ。むしろうれしいし」
変なやつ…
「そういえばさ、最近あいつら仲いいんだな。付き合ってんの?」
あいつらって?
「相川智貴と山之内多恵」
「あぁ…どうなのかな。多恵がまだ相川君のことスキだっていうのは聞いてるけど、まだ付き合ってはいないんじゃない?」
「ふーん」
言われてみれば最近どうなってるんだろ…。多恵のことだから付き合うことになったら真っ先に報告してきそうな気がするけど。
私が教室に入ると、さっきまで騒いでいたのが一気に静まった。
なに…この空気…?
「桜、ちょっといい?」
友里に呼ばれて屋上へ向かう。何があったの?嫌な予感…
屋上に着くと友里は一番奥にあるベンチに座った。私はその隣に座る。
しばらく沈黙が続いたあと、先に口を開いたのは私だった。
「友里、何かあったの?」
「あのね、私桜のこと親友だと思ってるよ。だからあんな噂信じたくなくて…。私の質問に正直に答えてくれる?」
私はただ頷いた。
「あの…桜がね、中学の時に学校の先生と付き合ってたって。その理由が……アダルトビデオに出てたのがバレて、その口止めのためだって…そういう噂があるんだけど。ウソだよね?」
そういうことか。
「…だいたい当たってるよ」
友里は目を大きく見開き驚きを隠せないようだ。
私は友里にすべてを話した。
私が中3の時…
当時付き合っていた彼がいた。4歳年上の大学一年生。コンビニで働いていた彼に一目ボレをした私は素直に気持ちを伝えた。
その日から私達は付き合うようになったのだが、彼には前から付き合ってる彼女がいて、もちろん私はただの遊びだった。
そんなことも知らずに私は初めての彼氏にとても喜んだ。初めての経験で毎日が楽しかった。もちろん体の関係もあった。
ある日、いつものように一人暮らしの彼の部屋に遊びに行った。
「ちょっとタバコ買ってくる」
そう言って彼は部屋を出ていった。よくあることだった。一人でテレビを見ていると、ドアの開く音がした。
「お帰り〜」
振り向いてみると、そこには見知らぬ二人の男がいた。一人は片手にビデオを回しながら…。
驚きと恐怖で声も出せずにいた。