人形使いになることを決めた日。-1
もし、この時に「深町君を殺したい」と言われていたら。
僕は、抵抗出来たのか――?
死臭がする。大量の死臭が。
それを作り出した先生は、笑っていた。
――“生きた”笑みで。
「深町君」
びくん!と身体が跳ねてしまった。ただ一言、先生に呼ばれただけで。
いや、今の先生は、先生なのか?
「お願いがあるの」
ドクン、ドクン、ドクン、ドクン
心臓の音が止まらない。寒くてたまらないのに汗が噴き出して止まらない。がくがくと震えが止まらない。
「……ちょっと行ったところに、私の車があるから。トランクの中に、着替えとメイク落としと……あとビニール袋が入ってるから、それを取ってきてくれる?」
「あ……はい」
先生が話題に出さないことに、何かすることを与えてくれたことに、僕は甘えてしまった。
それは多分、きっと、卑怯なことに。