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人形たちの話
【教師 官能小説】

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人間が殺人人形になる話。-3

(深町君、深町君、深町君、深町君)
 ドクン、と鼓動を感じた。
 感情の薄い自分から、これほどまでに強い、欲望にも似た衝動が、蠢きだした。
 前と後ろを貫かれていた自分が、絶頂に近づいていく。ぎゅうぎゅうと締め付けているのが自分でもわかる。強制的に送り込まれていく快楽。
(……ろしてやる)
 絶頂が、目前に近づいて。
 無意識に、前を貫いていた取り巻きの首に腕を巻いて。
「あ、あああああああ!!」
 背中を反らしながら、前にいた取り巻きの一人の首を、へし折った。
 ごきゅ、と腕に骨の外れて折れる音が響く。
 首がありえない方向に曲がって、崩れ落ちた。
 初めての殺人に感慨にふける間もなく、後ろを貫いていた取り巻きを見た。
「……へ?」
 理解出来ない、と言いたげだった。どうでもよかった。深町君の方を向く。
 深町君が、あの透徹とした瞳で、こちらを見ている。

「あ、は、あははははははは!!」

 ――絶頂。それは感じたことがないほど長く続いた。
 ペロリ、と唇を舐める。倫理? 法律? 世間体?
 そんなもの、この快感に比べたら、“どうでもいい”。
「こ、この!」
 異常事態に気付いた生きている取り巻きが、特殊警棒で私を襲う。馬鹿な男。この短い距離では十分に警棒の効果を発揮出来ないのに。
 だから簡単に奪えた。逆にこちらがぐちゃ!と思い切り振り下ろして、頭蓋骨を砕く。スイカを割るように簡単に割れて、大量の血しぶきと脳漿が私の頬を濡らした。
「ああ、熱い……気持ちいい……!」
 また、絶頂を迎える。今、はっきりと分かった。

 私は倫理に縛られる人間ではなく、殺人に快楽を覚える人形になった、と。

「……古谷君……?」
 飛び切り甘い声が出る。ペロリ、とまた舌なめずりをした。血の味がする。美味しい。
「ねえ、お願い……深町君から、離れて?」
「ひっ」
 先ほどまでの自信たっぷりの古谷はどこに行ったのか、怯えが顔を走る。
 それは理解出来ないものへの恐怖だった。根本から、相容れないような。
「ん」
 怯えを孕んだ視線に、思わず感じ入ってしまう。
 身体は全身が性感帯になったかのように熱いのに、頭はこの上なく冴えていた。
 最高の気分だった。万能感が精神を支配していた。
「深町君を、貴方の血で汚したくないから……」
 だっ、と逃げることを古谷は選んだ。この場ではそれが最善策だったのかもしれない。
 だけどズボンを中途半端に脱げた状態では、最速で走れるわけもなく、無様に転んだ。
「あは……!」
 古谷に馬乗りになる。「くそっ、くそが!!」諦めもせずバタバタと抵抗しているのは、ある意味凄いのかもしれない。
 深町君の透徹とした視線を感じる。それだけでまた絶頂に至りそう。
 でもそれはそれとして、制裁は加えないといけない。
「利き手を折るんですってね? ……こんな感じ?」
 特殊警棒を、軸にして。
 まずは右腕の下の骨を、折った。
「ぐああああ!?」
「あ、いい。その悲鳴……」
 先ほどは聞く暇もなく殺してしまったから、今度は聞き入りたかった。
 今度は指の骨。十本全部を、ぺきり、ぺきり、ぺきり。
「ぐあ、あああああ、た、たすけて……!」
「ああん、貴方、私がそう言ったら助けてくれた?」
 絶望の瞳。それだけでまた身体が快感に震えた。
 あっという間に我慢できなくなった。
 傍に私のブラを切ったハサミが落ちてあった。それを手に取る。
 ――やっぱり、殺すのは派手な方が、いい。
 刺し殺すには十分に大きいハサミだった。逆手に持ち、古谷の腹部に突き立てる。
「ぎゃあああああああ!!」
「あは、あはははははははは!!!」
 何度も刺す。何度も何度も何度も何度も何度も――!!
 私にとって死は、静かな冷たいものじゃなく、生のエネルギーをすべて放出させるような、とてつもなく熱いものだった。
 今や私の顔と身体は、血に濡れていないほうを探すのが難しい。
 そのぐらい、血まみれになっていた。



 ――殺し終わった後、しばらく呆然としていた。
 あまりの長い快楽に、身体がびっくりしたみたいだった。
「あ……深町君」
 一抹の理性が、助けないとと彼の方に歩き出す。
 後ろ手にガムテープで拘束されていた深町君を、解放した。唇に貼られていたガムテープは、深町君自身で剥がした。
「……先生……」
「深町君」
 決定的に変わった私を見て、深町君は何を思っているのか。
 その透徹とした瞳からは、何も読み取れなかった。
 でもそれでも見てくれていることが何よりも嬉しくて、私は笑う。
 初めて“生きた”笑顔を見せることが出来た。そんな気がした。



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