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人形たちの話
【教師 官能小説】

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人形使いになることを決めた日。-2


 先生は自分一人で死体を担ぎ上げた。元は古谷だったものだった。
「せ、先生」
 手伝います、の言葉は、遮られた。
「深町君には、純粋でいて欲しいから」
 何かを言い出せる雰囲気じゃなかった。先生は淡々とこなすべきことをこなすように、無表情になっていたから。
 先生は死体を三つ、黒いバンに乗せると、裸になって僕が持ってきたメイク落としで返り血を落としていく。何枚も何枚も使って、ようやく見かけ上の血が落ちた。ビニール袋にもう用を為さなくなったスーツやショーツを詰め込む。
「…………」
「……先生」
「深町君はここで見張ってて」
 トレーナーとジャージ姿になった先生は黒いバンを運転しだすと、そのまま埠頭の方へ走っていった。
 待っている時間が途方もなく長く感じられる。早く帰ってきてほしいのか、帰ってきてほしくないのか、それすらも分からなくなってた。
「――――」
 それでも阿呆のように待っていると、先生は徒歩で帰ってきた。
「先生、古谷達は……」
「海に捨ててきたわ。車ごとね」
 乗って、と今度は先生の車に誘導されて、僕は助手席に座る。
「ブラウスのボタンが気になるけど、どこにでもあるものだしね」
 エンジンがかかり、そろりと運転が開始される。
「……着替え、用意してたんですか?」
「別にこの時のためじゃなくて、災害とかの非常事態が起きた時のためにね。メイク落としは意外と便利なのよ?」
 車のトランクに非常事態用の袋を用意しているあたり、先生は真面目だった。
 だけど今の先生は――
「別れましょう、私達」
 無表情に、言い切る先生の声に。
 僕は――
「ふうっ!?」
 怒りを覚えていた。
 殆ど車が来ない赤信号でも律儀に止めたのを見て、ショーツの中に指を突っ込む。
 普段の僕ならあり得ない行動に、先生は驚いていた。だけど。
「ふ、あ、、あ、、、、うぁぁ……っ、!」
「びしょびしょじゃないですか」
 怒りに任せた声は、自分でもぞっとするほど冷たかった。
「そんなに古谷達を殺したのが、良かったんですか?」
「あ、あ、……深町、君、危ない……危ないからぁ……」
「確かに、こんなに感じ入ってる先生に運転を任せるのは危ないですよね」
 親指でクリトリスをつまみ、指を二本、蜜壺の中に突っ込む。簡単に呑み込んでいく。
 青信号になっても車は発信しなかった。でもそれを咎める車はなかった。
「先生、綺麗だ……人を殺して笑ってた時の先生は、すごく綺麗だったよ……」
 くん、と首筋に顔を埋める。血をふき取っても死臭がまだ漂っていて、先生自身の匂いと死臭が混ざる。
 まるでフェロモンのように、その匂いは僕を惹きつけた。
「まだ敏感になってますよね? 僕に嘘を吐かないで……本当は僕とも別れたくないんですよね?」
 今思えばすごく傲慢な発言だったけど、先生は頷いた。
「……殺した時の感触が、忘れられないの」
 は、は、は、と規則的に吐息を漏らしながら、先生は腰を反らした。
「んあ、私きっと……いつかきっと、深町君を」
 ――殺すわ。
「だから、ダメなの、別れなきゃ……ダメなの、だって私、わかるもの」
 ペロリ、と舌なめずりをする。ようやく無表情から、微笑が零れた。
「深町君を殺したら、すっごく気持ちいいって」
 舌が、僕の舌と絡まった。
 我慢出来なくなった、それがわかるぐらい性急なキス。それでも僕の感じるポイントを全て押さえるのだからさすがだった。
「……ホテル、行こうかと思ったけど、我慢出来ないわ……深町君が誘うのが悪いのよ?」
 唇からは僅かに血の味がして、死臭と混ざる。
 きっとこれが、先生本来の“匂い”なんだ。
 どこかの駐車場に車を止めると、先生は僕のズボンのジッパーを下ろす。
 多分、ここからは一歩間違えれば、先生は僕を殺す。



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