叔母と甥、一夜の過ち-9
≪起きてしまった過ち≫
「この夏が大切なんだよ。海に行きたい、山に行きたい、誰も思っているけれど、それを我慢して、こうして勉強する。来春、君たちには必ずいい結果が待っている…」
(おばちゃん、聞いてたんだよ、絶対にそうだよ…)
予備校の授業も太一には全く耳に入らない。
「せんせい、どうしたの?」
「あら、ごめんなさい」
「さっきから窓の方ばかり見ているよ」
悦子も昨晩のことが頭を離れず、様子がおかしいと進学教室の子供にも気づかれている。
夕食は二人だけになったが、互いに何も喋らず、太一は勉強部屋である書斎に引きこもってしまった。
「太一、遅くまで頑張るわね」
午後11時を過ぎた頃、悦子もこのままではいけないと、夜食を持って太一のところに行ったが、やはり、顔を伏せたままだった。
「おばさん、もう寝るけれど、洗濯物は出しておきなさい。それからお風呂、必ず消しておいてね」
「うん」
「お休み」
「お休み」
悦子が背中をポンと叩いたが、太一は恥ずかしいのか、振り向こうともせず、気まずい関係を修復することは出来なかった。