危険な男-1
「なななんであんたがここにいんのよっ! 出てってっ!! 今すぐここから出てってっっ!!」
扉に身を寄せながら絶叫するまりあ。
「あのなぁ……」
「ぎゃぁああっ! いやぁあああっっ!!」
顔を真っ赤に染めてきつく目を閉じる少女は、聞く耳などどこかに置き忘れてしまったかのように一心不乱に両手を振り回している。
「はぁ……」
苛立ったようにガシガシと頭を掻く焔は呆れてその瞳を鋭く細めると――
――バンッ
「少し黙れ」
長い両手がまりあの頭を囲うように扉へと叩きつけられ、焔と扉の間に挟まれた少女は音と衝撃を受けてビクリと震える。
「……っ! な、なによっ!? 思い通りにならないからって乱暴する気っ!?」
キッと眦をつり上げたまりあに迫るのは、炎のような煌めきを瞳の奥に宿した男の顔の焔だった。
「よく聞け痴女。ここは俺の部屋だ。勝手に侵入して騒いでるのはお前のほうだ」
「……えっ?」
「それとも何だ? 俺の部屋だってわかってて飛び込んできたのか?」
焔は扉へとついていた片手を離し、妖しく微笑むとその指先でまりあの顎をなぞる。
「……っな!?」
(こいつっ! や、やばい気がするっっ!!)
強すぎる男の色気にあてられ、まりあは軽い眩暈を覚える。
しかしこれ以上後ずさりすることもできず、迫る危険な香りから目を背けるようにきつく目を閉じる。
「嫌なら目を閉じるな。閉じたら俺は遠慮なく行くぞ」
微かに優しさを含んだ焔の甘い眼差しと唇が容赦なくまりあに迫る。