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よだかの星に微笑みを(第三部)
【SF 官能小説】

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激突-1

「あんな子供を寄越すなんて、ばかなのかしら。」
蘭が呟いた。二人と俺は通信で繋がっていて、話ができる。
「勝算があるのか、あたし達を知らないのか。」
言ってアンカは全身の針をナースチャへ向け打ち出した。
「おい!」
針はナースチャに届かなかった。バリヤーだ。続いてアンカは、空気が震撼する強烈な衝撃波を送った。それも当たらない。
「空じゃなければぶっ潰せるのに!」
「OHFの武器って、物に頼ってない?」
今度は蘭が片手をナースチャに向けて挙げた。
「血液を沸騰させる。逃げられないよ。」
しかし、蘭の体を雷が貫いた。一瞬の事だった。いつか俺が使った技だ。
カウンターを食らった蘭は燃えながら墜落し始めた。
「蘭!」
気を取られた瞬間、アンカと俺に落雷が直撃した。アンカは耐えている。物理的攻撃に対して、攻防共に強いようだ。
「格闘に持ち込んでやる!」
アンカは飛び去った。
ここでも何ともなかった俺は、落下していく蘭を拾うため、急いで下降した。
落ちる前に何とか追いついたものの、蘭の腹は大きく裂け、内臓が飛び出していた上に、皮膚は黒く焦げていた。
「落ちてたら死んでたかも。ありがと。」
人体模型のように皮膚の剥がれた顔で笑ったあと、蘭は気を失った。
上では、アンカが猛烈なスピードでナースチャに突進しているところだった。
針を四方に飛び散らせたかと思うと、アンカは消えた。ステルスだ。衝撃音と共に再び姿を現した時には、ナースチャの肩口を摑んでいた。バリヤーを相殺したのだ。
空中を舞っていた針が一斉にナースチャに降り注いだ。
「さよなら!」
アンカの腕がゴリラのように大きくなり、ハチの片腕をもぎ取った。そしてワニに変化した顎がナースチャの頭に噛み付いた。
しかし、同時に無数の細かい光にアンカの体は包まれていた。そして墜落し始めた。ほとんど空一杯に、球電と言うのだろうか、ボール状の青白い光が浮いている。アンカはそれに打たれたのだった。
「くそっ!」
俺はアンカも拾い上げると、そのまま退散することにした。
「追ってくるかな。」
ナースチャを見ようと思ったら、望遠機能が作動した。
ナースチャの全身にアンカの針が刺さっている。片腕は無く、ハチの顔は噛まれて歪んでいた。意識があるのか無いのか、朦朧とした様子だった。だが、触角で明らかにこちらをチェックしている。
離れて見ると、それはハチの巣に似ていた。球電はさしずめ働きバチである。ナースチャを中心に、激しく飛び交っている。
ステルス機能を使って逃げたいのだが、アンカが気絶しているので、見えてしまう。
アンカは変身が解けて、裸の女になっていた。怪我が蘭より酷かった。
轢かれて内臓も破裂した猫を二匹、抱えている気分だった。
俺はだんだん腹が立ってきた。それなのに、自分では攻撃の仕方が分からない。
ふと下を見ると、ポリアンナが立っている。
「ポリアンナ、どうした?」
「嫌な予感がしたから来てみたの!」
「あの、上にいるのはナースチャだ。俺以外、やられた。」
「え?」
ポリアンナの額に触角が生じた。ナースチャの触角がそれに反応した。
「やばいだろ、それ! 何してんだ、ポリアンナ!」
俺は林の中へ降りて二人の女を下ろした。ここなら球電に襲われにくいはずだ。
ポリアンナの身が危なかった。林の中を移動した俺は、別な位置から飛び上がった。ポリアンナは守るしかない。俺がナースチャを引き寄せる。
けれども、ナースチャの球電は消滅していた。そして、二人と同様、ナースチャも、金髪の少女に戻って林へ墜落した。


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