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よだかの星に微笑みを(第三部)
【SF 官能小説】

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錯綜-2

「お兄さん、誰?」
大学へ向かう道で呼び止められた。日本語だったが、呼んだのは外国人、長い金髪の美少女だった。ただし小学生である。嫌な予感がした。誰も何も、こちらは知らない子供なのだ。
「ん?」
スキャンされている。そう感じた。
変身しない限り、改造人間同士でも互いにそれとは普通気付かないものだ。こちらもスキャンを仕返してみたが、ポリアンナ並みの美少女の、この年齢の子に毛が生えているものか、単に知りたくなったからだった。
胸は乳首だけ尖っていて、割れ目に毛はなく、おしっこのにおいが女のにおいより強く籠っている。小学生のものは、親戚の子を見て以来だ。印象の新鮮さに俺は勃起してしまった。
しかし少女に感じた実態は、俺によく似たハチだった。色と大きさは違うけれども、確かに俺によく似ている。つまり、生類解放戦線の新型らしい。
攻撃的機能が次々とスキャンされて挙がっていく。自分にもある筈の機能だ。変な気分だった。才能としては、こんなことより料理でも出来た方が生活の役に立つ。
小学生の顔が赤くなっていた。そして
「玉って、本当に玉なんだ。棒がいつのまにか上向いてる。なんで?」
口に出した小学生は、恥ずかしくなったらしく、スキャンを止めた。
「ちょっと歩こうか。」
俺たちは、近くの公園に行った。大学近くの公園にほとんど人は来ない。しばらく黙って歩いて、ブランコに腰かけた。
「お兄さん、誰なの? 登録がない。でも仲間だよね。あたしと同じ型。あたし、新型の筈なんだけどな。二人いるなんて聞いてない。それに、お兄さんのこと、全部はスキャンできなかった。なんで?」
「俺はウラジーミルって呼ばれてる。」
「なんでウラジーミル?」
「ほら、プーチン首相って、ロシアに居ただろ。憧れてたから。」
ナボコフと言ってもこんな少女は知らないだろうが、名前の訳を子供に説明するのは憚られる。
「あたし、ロシア人なんだよ。四年生の時、引っ越してきて、この前改造されたの。でも、改造はロシアでされた。」
「話が全然分からない。」
「とにかく、二つある敵の組織の最新型が両方とも日本にいるって。それを叩いておけば、今のところ、こっちの活動が有利なんだって。強いの、あたし達が。それで来たのに、何でお兄さんがいるの? お兄さんがいるのに、敵の最新型が何でまだいるの?」
「さあ・・・。」
答えられない。だが、少女は不意に慌てて
「ん? 今何時?」
「四時二十分。」
「大変! お仕事に遅れる!」
少女は立ち上がった。
「襲撃のお仕事かよ。」
「違う! モデルのお仕事!」
「モデル? あ、ポリアンナって知ってる?」
「事務所のお友達。好きなの?」
「うん、まあ。」
「いつか紹介してあげる。じゃ、さよなら!」
「名前は?」
「ナースチャ!」
少女は走って去った。飛べばすぐなのにとは、本人も思ったことだろう。
モデル二人の知り合いになった事実がなんだか俺は嬉しかったが、要は俺も権威主義者なんだなと、自分に少々恥じ入りもした。


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