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〜吟遊詩〜
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〜吟遊詩(第四部†砂漠の国ディザルト†)〜-9

「おい、ナオ!どこに行くんだ!?」
ナオと呼ばれたサングラス男は振り返り、一言だけ言葉を発した。
「宮殿。」
「はぁー……お前、お尋ね者だって自覚あんのかよ!みすみす捕まるようなマネするな」
「ヘーキだ……」
ナオはそれだけ答えると、エアルに不適な笑みを見せ、ホテルから出て行った。
「……すいません!今の男、犯罪者なんですか??」
エアルは急いでナオと仲良さげに話したフロントの男の元へ詰め寄った。
「まぁ宮殿に追われてるって事はたしかですね。でも理由は聞かないでください。まだ死にたくありませんから!」
はっきりしない返事にエアルはイラつき、お金を出そうと財布に手を伸ばす。
「駄目です!こればっかりはいくらお金を積まれても答えられません!!」
フロントの男は慌ててエアルの行動を制止した。
その様子を見て、エアルは気付く。
(それだけ凄い事情なんだ…犯罪者、BC、それから戦争と宮殿……)
パズルのピースが当てはまって行くように、エアルの中で何かが繋がった。
「もし、BCが関わっているとしたら…?宮殿にあるメインブロックをBCが狙う。当然、宮殿側は阻止しようと戦うだろう。つまりこれがリンさんが言ってた“戦争”ってやつだ。宮殿対BC…。それからナオと呼ばれた男が宮殿から追われる犯罪者だとしたらナオは“BC”。ナオは俺が純血(=持ち主となる人かも)だって気付いたか?それよりユノは宮殿に向かったんだ。ユノがめちゃめちゃ危ないんぢゃぁ………」
エアルは頭の中を整理するように小さく呟いた。
血の気が引いていくのが分かる……。昨日一緒に居なかった事を後悔した。
「ユノを追わなきゃ!!」
エアルは勢い良くホテルを飛び出した。

 眩く砂に反射する太陽の光。エアルの視力を一瞬奪った。
その瞬間だった…エアルの頭に何かが突きつけられたような音がした。
━━━『チャッ』━
エアルは目玉だけを音がした方に動かした。
自分のこめかみに黒い物体が押し付けられている。それと重なってナオが見えた。
(銃!?)
ナオが自分に拳銃を向けていた。
『ガチャッ』っと銃のストッパーを外す嫌な音がする。
「やっぱりな…お前は俺の敵だったか」
エアルが両手を挙げ、降参のポーズをとりながら言った。
「そういうこと。ここでお前を殺す。そして昨日来たあの女もな…」
「……………」
汗がエアルの額を伝って落ちていく。
エアルは小さく深呼吸すると目を瞑り唱えた。
━━(バルーン…!)━━
エアルのブレッドだ。物や人を空気より軽くし、浮かせるとこができる。つまり重さの変換━━…これがカラクリだ。
バルーンの狙いはナオの銃。
異変はエアルが唱えた瞬間からあった。軽くなりすぎたナオの銃はエアルのこめかみから外れ、ナオの意識とは関係なくフワフワと動く。
ズレを修正しようにも重さが一定じゃないので力の入れ加減がうまくいかない。考えるスキを与えることなく、エアルはナオから銃を叩き落とした。
そのままナオの手首を掴むと、空いている方の腕をナオの首に絡め、地面にねじふせる。
「今度からは躊躇わずに撃つことをお勧めするよ」
エアルは上からナオを覗きこみ、そう言うと腰から短刀を取り出した。
ナオの喉をめがけて振り降ろす。
ナオも同時に腰からもう一つの銃を抜き、エアルの胸に向かって撃った。今度は躊躇わずに…


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