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〜吟遊詩〜
【ファンタジー その他小説】

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〜吟遊詩(第四部†砂漠の国ディザルト†)〜-8

━━━━━……

《ホテルサボテン》
 まだ日が登りきらないうちにエアルは歩き出し、ホテルサボテンの前で足を止めた。ホテルの前にあるラクダ置き場にユノの乗っていたラクダが繋がれていたのを見付けたからだ。
 ロビーにはエアルの他に、若い男の人が一人、(エアルより少し年上か?)ソファーに座って新聞を読んでいた。
とりあえず、フロントにいる男の人に話しかけてみる。
「あのー…金髪の女がココに……」
「宿泊費ハ“3万コスモ”ニナリマス。」
「いや。泊まらないし!だからー長い髪で、露出狂の女が………」
「休憩ハ2時間で“4500コスモ”ニナリマス。」
「いや。休憩でもないし!違くて、赤い目をしたユノって女が……」
「ゴ飯ノミデシタラ“1500コスモ”ノ バイキング ニナリマス。」
「………くそ。」
(金払わねぇと話さない気だな<怒)
「ほら、宿泊費……3万」
エアルは根負けし、しぶしぶフロントに宿泊費を投げた。
「アリガトウゴザイマス★失礼ですが、エアル様ですね?」
フロントの男はニンマリと3万コスモを握り締めるとエアルにそう尋ねた。
「えっ!何で俺の名前知ってんだ!?」
「ハイ、ユノ様よりメモを預かっております…。チビでボンボンの坊っちゃんに渡してくれ、と…。」
「…(怒)だったら早く出せよ……いや、それよりユノの中で俺はそんな存在なのか!?……つーかお前普通に話せるじゃねぇかよっっ!片言キャラは作りもんか!?」
エアルは小さな紙切れをフロントの男からもぎ取り、ソファーに座った。
何故か色々な事にムカついた。
フロントにただ一人居た男の客は、相変わらずエアルの向かい合わせにあるソファーで新聞を読み続けていた。
白いワイシャツに黒のネクタイ。背はエアルよりかなり高そうだ。髪型は額から後ろに掻き上げられた黒髪で、少しほぐれ落ちているのが何ともセクシーだった。
おかしな所は、形の良いサングラスを掛けているのにワイシャツの胸のポケットにもサングラスがしまわれている事だ。
エアルは四折りにされたメモを目の高さまで持っていき、目の前に座るサングラス男ををメモの隙間から盗み見た。
(大人っぽい……でも、あの足の長さは絶対邪魔になる!!それに細すぎるから格闘技系は苦手に違いない!)
エアルはニンマリと頷きながらそう思ったが、全ては背の小さいコンプレックスからきた偏見の塊の感想に過ぎない……。
サングラスの中で男の視線が動いた気がしてエアルは慌ててユノからのメモに目を向けた。
━━━エアルへ……
宮殿関係の人と偶然にもバッタリ会っちゃって★だから二人分の通行書貰ってくるね!エアルはそこで待ってていいよ♪♪
……ユノより━━━
丸っこい文字が紙面上を踊っている。
(通行書ってそんなに簡単に貰えるのか??宮殿は様子がオカシイってリンさんが言ってたのに……)
エアルは考えるように目を天井に向けた。
不意に目の前に居る男が話しかけてきた。エアルがメモを読み終わるのを待っていたかのようだ。
「お前達、宮殿の奴らか?」
突然の事にびっくりしてエアルは答えに詰まる。
「えっ!?あっ……嫌、違うけど?」
「ふーん……にしては宮殿からの待遇が良すぎるな」
サングラス男はニヤッと意味深な笑いを浮かべ そう答えると、ソファーから立ち上がった。そしてそのまま出口に向かう。
エアルと擦れ違う瞬間、サングラス男は小さく呟いた。
「ブラインド・チェリー……」
「えっ!?!?」
空耳だったのでは、と疑ってしまうほど本当に小さな声だった…。
エアルは慌ててサングラス男を目で追った。その横顔から僅かに見えた口元は微妙に微笑んでいた。
(宮殿……BC…??)
サングラス男に聞き返そうにも、びっくりした体は直ぐには動いてくれず…関連性がなさそうな二つの単語が頭の中で巡るばかりだった。
サングラス男がドアに手をかけようとすると、フロントの男が声をかけた。


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