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よだかの星に微笑みを(第一部)
【SF 官能小説】

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何もするまい-2

「山間部で大量に増え、林業や農家に影響を与えていたシカやイノシシが、今年は全く姿を現さないと、話題になっています。」
「この村を近年困らせていたアライグマの集団が、突如、姿を消しました。」
「市街地の営巣が問題視されてきたカラスですが、春ごろから一羽も見なくなったと、人々は首を傾げています。」
テレビというものを久しぶりに見たそのニュースで、そんな話を何度も聞くようになった。いずれも原因は不明だという。
「なぜか分からなくても、とにかく良かったわね。」
「俺の実家にも今年は害はないってよ。」
父親と母親が、昼食の時そんな話をした。父親の実家は、温泉でも有名な山奥にある。
「どこかの業者がやってるんじゃないの?」
俺が呟くと父親が
「原因不明だぞ。それに業者でもイノシシはさすがに無理だろう。シカは猟友会がよく出て行くな。アライグマなんかは、地元で罠に掛かったのを、自分らで川に沈めて殺したりしてるんだけど、それでも増えて困るそうだ。」
「かわいそうだな。」
「食えれば売って商売になるから、シカとかイノシシなんか、どうにかなりそうなもんだ。アライグマは外来種だし、食えないから、殺すしかないんだろう。」
以前、外来種の話題に飲み屋で盛り上がった事があった。あの後、話はペットの殺処分や動物実験、イルカ漁、果ては菜食主義の是非に及んだ挙句、大いに脱線して、肉食系女子の議論で解散したのだった。
精液は女に絶対飲ませるから肉食系がいいと力説する伊月と、俺は女の股間だけは絶対舐められんと主張していた渡部ばかりが記憶に強く残っていたが、いま、ほかの議論もした事を思い出した。
確か、外来種に対する考え方は概ね一致したはずだ。則ち、単なる駆除には反対。ただし代案は出ず、文句を並べただけになった。
「取り敢えず、殺すのには反対だよ。食用の捕獲も反対。」
と俺が言ったら父親に
「お前は共産党か。何でも反対か。」
そうからかわれた。確かに去年の選挙で俺は一票入れていた。


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