愛憎睾丸めぐり-2
二学期も終わりが近づいた十一月のことである。
「ヨハンナ、ここ、教えてくれない?」
「どこ?」
苦手な数学を清流が教わろうとして尋ねたのは、小学校から一緒の、二組のヨハンナだった。ヨハンナは親が外国人で、五年生のとき転校してきたのだが、頭の良さはクラスどころか学校一の天才肌であった。同じ小学校からここの中学には清流しか上がって来ず、金髪碧眼の少女は女子たちに敬遠されていた。
ヨハンナの机の前に立つ清流は、体操服姿だったが、つまらぬ前の授業のせいで、下半身の血行が悪く、だるさを感じていた。男子の体はこんな時にも勃起するものである。清流は、そうと知らずにヨハンナへ、大きく隆起した体操服のズボンを突き付けていた。
「因数分解の公式、覚えてる?」
ヨハンナの目は清流のズボンを見つめていた。ときどき、上に視線をやって、清流の顔を確かめるように見た。
「分かる?」
「うん。サンキュー。」
無意識ながら、清流は腰をよじっている。
「里山、後でちょっといい? 話したいこと、あるんだけど。」
「昼ならいい。放課後はだめだ。」
放課後は早く帰って、共働きの親のいぬ間にインターネットを見たいがためだった。
「体育館に来て。二人で話したい。」
「人が沢山いるじゃないか。」
「だから目立たないでしょ。」