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ケイの災難
【コメディ 恋愛小説】

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ケイと圭介の事情(序章)-9

「ちょっと失礼」
そう言って一瞬だけ笑顔を見せると、香織はケイの脇腹目がけて手を伸ばした。
「ひゃっ!?ちょ、ちょっと香織ちゃん!やめっ、あはははははっ……」
香織にいきなり脇腹をくすぐられたケイは抵抗する間もなく身を悶えさせながら笑い始めた。
「ほらほらケイ、もっと肩の力を抜いてリラックスしよ。でも、ケイってば本当にウエスト細いなぁ」
いたずらっ子のような笑顔を見せながらケイに話しかける香織は楽しそうだったが、ケイにしてみれば返事をする余裕などまったくなかったのだった。
突然ケイをくすぐりだした香織の行動を香澄と智香はしばし呆然と眺めていたが、カメラマンの川上はそんな二人の様子をしっかり撮影していたのだった。
「川上、今のちゃんと撮った?結構面白い絵だと思うんだけどね」
「使いどころは難しいですけど良いのが撮れましたよ土方さん」
ケイに抱きつく香織を見ながら奈津子とカメラマンの川上が話をしていると奈津子は一つの提案を出した。
「んー、それじゃあ今回は香織ちゃんにムードメーカーになってもらって撮影を進めようか」
「いいんじゃないですか。あの雰囲気の二人を見たら自分もそれでいいと思いましたよ。それにここの責任者は土方さんですし」
こうして撮影方針の修正がされ撮影の再開に向けて各々が動き始めたのだった。
 
撮影が再開されて2時間後─
 
俺は内心とても驚いていた。奈津ねぇの指示で朱鷺塚にリードしてもらいながら撮影を再開したんだけど、朱鷺塚と一緒にいるだけなのにすごく自然に笑顔が出てる自分が信じられなかった。
当初は嫌々ながら始めた仕事であった事とクールなイメージを要求されていたので微笑程度で今まではOKだったので今日みたいな仕事は本当に困っていたのだが、今回は朱鷺塚達に救われたみたいだ。
でも、朱鷺塚ってこんな楽しそうな笑顔をするんだなぁ。
朱鷺塚の感情をストレートに出した笑顔を見てそんな事をふと思ったら、自分の朱鷺塚に対する気持ちに一瞬違和感を感じてしまった。

今は気付かないこの気持ちが後にやっかいな事になるとは今の俺には分かる筈もなかった。
「OKでーす」
撮影が終わりスタジオにみんなのお疲れさまの声がこだまする。
「か…香織ちゃん」
一言礼を言おうと圭介は朱鷺塚を呼び止めた。
「何?ケイ?」
先程よりも楽しそうな笑顔を見せる。
「ありがと…ね」
「あー…脇コチョ?」
そう言って手をニギニギさせて悪戯っぽい笑顔になる。先程の事を思い出し圭介はゾーっと鳥肌をたてる。
「違…たしかにあれはリラックスしたけども」
「でしょ。よくお姉ちゃんが機嫌悪い時にやるんだー」
そう言われついその図を想像してしまう。仲良く戯れる美人姉妹。
「ケイ??」
はっ!!トリップしてた。
不思議そうにこちらを見る香織。圭介は軽く咳払いして話を戻す。
「あー…だから…リードしてくれた事。みんなに迷惑かける事なく撮影終われてマジ助かりました!!ありがと」
「やん。ケイに感謝されるなんてぇ〜本当大好き」
そう言って朱鷺塚は抱きついてきた!!
うわっ!?
女に抱きつかれ圭介は身動きがとれなくなる。
やばいって…Help me!
智香を見ると友美さんと話していて気付いてくれない。香澄先輩は撮影で使った花をもらっていた。
唯一見ていた奈津ねぇはせせら笑っている。
さらには、口ぱくで「ラブラブ」と言って、まるで助ける気配がない。


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