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ケイの災難
【コメディ 恋愛小説】

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ケイと圭介の事情(序章)-8

「圭介、なかなかモテモテじゃない。香織ちゃんも香澄ちゃんも可愛いしいい子だよねぇ。オカマのあんたにゃもったいないってね。にゃはは〜」
奈津ねぇは俺の肩を思いっきりバンバン叩き大笑いしてくれたのだった。
「何言ってやがる。あの二人が見てるのは圭介じゃなくてケイだろっ!知っててそんな事を言うんだから質が悪いよな奈津ねぇは…」
思わずため息をつきながらやれやれという仕種を俺が見せると奈津ねぇはケラケラ笑いながら俺が一番気にしてる事を言ってきた。
「圭介のときには全然モテなかったのに、ケイになった途端にモテはじめるなんてね。おまけに女性としての仕種も自然になってきたし、圭介あんたジェンダーアイデンティティのピンチなんじゃない」
奈津ねぇ…。それ、本当に止めの一言だぞ……。
トラウマになったらどうしてくれるんだ。
 
三人が撮影の準備をしてる間、奈津子にからかわれまくりすっかりイジけてしまった圭介。そして撮影再開の為、圭介を呼びにきた友美は憔悴しきった彼を見て驚きつつもいつもの事だったので苦笑するしかないのだった。
「土方先輩、圭介くんをいじめすぎですよ。まだ撮影が終わってないんですから程々にして下さいね」
圭介を一通りからかいつくし満足顔の奈津子を友美が嗜めるように言うが、奈津子は「はいはぁ〜い」と空返事をするだけで反省どころか既に一仕事を終えたような爽やかな顔をしていたのだった。
「もうっ!土方先輩は相変わらずなんだから…。それじゃあケイちゃん、大変だろうけど準備お願いね。智香ちゃん達の準備もOKだから」
そう言いながら友美さんは俺の背中を押し「残りの時間も笑顔でがんばろうね!」と励ましつつ俺と友美さんは三人のところへ歩いて行った。
 
「お待たせしました。ケイちゃん入りまーす!」
友美さんの一声で撮影スタッフのみんなが動き始め、俺もメイクさんから軽くメイクを直されている間に智香達はカメラマンから立ち位置やポーズのレクチャーを受けていた。
そんな三人を見ているとやはり初めての撮影だけあって緊張はしてるみたいだ。朱鷺塚はそれでも嬉しそうな感じだし、智香は逆にガチガチの状態だったがそれがある意味予想通りだったので気持ちが少し楽になった。しかし、その二人より香澄先輩がいつもと大して変わらないのが俺には驚きだった。

「あの子達なかなかいいセンいってるわよ。磨けばもっと光りそうだし。特に香織ちゃんだっけ、あの子はこの業界でやっていけるわねぇ。ノリがいい割に礼儀もしっかりしてるしね」
とは、メイクの小谷さん(♂)の弁である。
どうやらメイクをしてる間に朱鷺塚と意気投合してしまったらしいのだ。
 
ちなみに余談だが小谷さんの外見は本っ当にマッチョで一見Gの方に見える(本当にGとの噂もある)のだがその仕事の細やかさは一流との定評があり、小谷さんに太鼓判をもらったモデルの子のほとんどが一流のモデルになってるという恐ろしいくらい人を見る目がある御仁なのである。

小谷さんの発言に奈津ねぇが「スカウトしちゃう?」と返していた。圭介は冗談じゃない…と二人を睨み付けた。
「わかってんの!?俺男なんだよ!?ただでさえ他のモデルの女の子達がたくさん居て隠すの大変なのに…朱鷺塚スカウトしたら学校にばれる恐れもあるんだからな!?」
小声で文句を言うと小谷さんは「冗談よぉ」と笑い、奈津ねぇは「バレたらバレた時よ」と開き直っていた。

程なくして撮影が始まった。…が、やはりこの状況。先程より笑顔がぎごちなくなる。
「ケイちゃんはやっぱりクールにきめるしかないかなぁ?」
カメラマンからため息が漏れた。彼には今のケイの心境と状況がわかってない。文句を言われても圭介はどうしようもないのだ。
「待ってください!」
その声にスタジオが一瞬静かになった。…朱鷺塚香織が怖い顔をして律儀に手を挙げて発言していた。
「私達はケイを笑顔にするためにヘルプで入ったんです。少し時間をください」
言い終わらない内に振り返ったかと思うと、突然の出来事に唖然としていたケイの腕を引っ張った。


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