油断-2
マギーは広徳の通う千城大学へ向かった。国立ではあるが全国レベルで見るとさほどレベルの高い大学ではない。次期総理大臣を狙う男の息子にすれば平凡すぎる大学だ。普通なら東京六大学には進学させるところだろうが、何か政策的なものがあるか、もしくはさほど学力が高くないかどちらかだろうと考えていた。
大学に着くと、予めアポを取っていた学長に連絡を取ってもらい学長室に招かれた。
「はじめまして、学長の小平實と申します。」
「県警本部の菜月マーガレットと申します。宜しくお願い致します。」
社交的な挨拶を交わし本題に入る。
「高島謙也氏のご子息、広徳さんについてお伺いしたいのですが。」
広徳の名前を出した瞬間、小平のは満面の笑みを浮かべた。
「あー、高島広徳君ですか。我が校の自慢の生徒ですよ。」
「と申しますと、優秀なんですか?」
「はい。成績優秀、 人柄もいい。スポーツも万能で非の打ち所がない生徒です。受験時に東京の有名大もいくつか受け全て合格したのですが、地元愛が強く我が校に入学したと言ってました。父を超える人間になり、地元で一番の政治家になるのが目標だと言ってます。」
「政治家を目指してらっしゃるんですか?」
「ええ。近年人口減少傾向にあり、廃れていく街が増加しているこの現状を変えたいんだと。魅力ランキングで毎年最下位の我が県をトップ5以内にしてみせる、が口癖ですよ。いつもあちこちのイベントにボランティアとして参加して頑張ってますよ。その上成績は入学以来ずっとトップですからね。模範的な優秀な生徒ですよ。彼ならこの千城を変えてくれるのではないでしょうか。まー、強いて言えば女癖が悪いのが難点でしょうが、あれだけモテれば仕方のない事かもしれませんがね。」
「そうなんですか。」
大学側からすれば模範的な優秀な人間かも知れないが、マギーからすれば犯人像に近いように思える。
「今、どちらにいらっしゃいますか?」
「今日はバスケットボール愛好会の練習をしてるはずです。地元クラブからも声がかかる程の実力者ですからね。体育館にいますので声をかけられたらいかがですか?」
「もしよろしければそうさせていただきます。」
マギーは体育館の場所を教えてもらった。
マギーが学長室を出る間際に学長に、
「イケメンですから心を奪われないよう、気をつけてくださいね。」
と声をかけられた。
「その心配は無用です。では。」
何を言ってるんだと思いながらマギーは体育館に向かって行った。