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「そのチョコを食べ終わる頃には」
【寝とり/寝取られ 官能小説】

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『第2章 その秘密の出来事は』-6

 明くる日、実習最終日の午後、実習生の退任式が体育館で催された。式の間中、遼は涙をこらえていた。クラスでのお別れの会の後、廊下で利恵は遼を呼び止めた。
何も言えずに佇む遼の肩に手を置いて、利恵は微笑みながら穏やかな口調で言った。
「秋月くんのお陰で充実してた。学校でもプライベートでも」
 そして遼の顔を覗き込んで、ウィンクをした。
 唇を噛みしめ、遼は泣きそうになっていた。利恵は耳元で囁くように言った。
「じゃあね。素敵な時間をありがとう」
 ローズマリーの香りがした。
 遼の肩から手を離し、利恵は遼の手を取った。
 遼の目からこらえきれずに涙が溢れ、リノリウムの床にぱたぱたと音を立てて落ちた。
 利恵は手に持っていた小箱を遼に差し出した。
 上目遣いで利恵を睨みながら、遼はかすれた声で言った。
「何ですか? これ」
「チョコレート」
「チョコ?」
「大人のブランデー・チョコレート。大人になった秋月くんに私からのプレゼント」
 遼は鼻をすすってその箱を受け取った。
「そのチョコを食べ終わる頃には、私への思いも忘れてるわ、きっと」
「忘れるわけないよ……」遼はうつむいて小さな声で言った。
「もし、またどこかで会えたら、私が貴男を誘ったもう一つの……」
 利恵の言葉を遮り、遼は赤くなった目で利恵を睨みつけ、叫んだ。
「もう先生になんか会いたくありません。さようなら」
 遼は乱暴に涙を拭い、剣道道場の方に駆けていった。


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