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「そのチョコを食べ終わる頃には」
【寝とり/寝取られ 官能小説】

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『第2章 その秘密の出来事は』-5



 教育実習期間最後の週の木曜日。
「秋月くん、昨日は貴男の誕生日だったんでしょ?」
 全身に汗を掻き、利恵と遼は一人用の布団に並んで横たわり、荒い息を整えていた。
「はい」
「ご家族に祝って頂いた?」
「ケーキが一つと、今年は新しい竹刀でした」
「そう。良かったね」
「私からは何もプレゼントできなかったね、ごめんね」
「そんな気を遣わなくても……」
 遼は沈んだ声で言った。
「どうしたの? 何だかいつもと違う。暗い雰囲気」
 利恵は遼の顔を覗き込んだ。「どうかした?」
 遼はぷいと利恵に背中を向けた。
「秋月くん?」
「利恵先生は、」遼はくぐもった声で口を開いた。「明日にはここからいなくなるんでしょ?」
 利恵は遼の顔を自分に向けさせた。
「そうね。大学に帰らなきゃ」
 遼の目には涙が滲んでいた。
「寂しいです、僕……」
「私も……」
「また会えますか?」
 利恵はひどく切ない顔をして首を振った。
「もう……」
「また会いたい……」
 遼はこぼれた涙を乱暴に拭って、利恵を睨みつけた。
「ごめんなさい。けじめをつけましょう」
「けじめって何?」遼は大声を出した。「何のけじめなんですか?」
「大人としての……けじめ」
 遼は唇を噛みしめながら利恵の目を睨みつけていた。
「君が初めて食べたペペロンチーノと同じ」
「え?」
「初めてのものって、ありきたりのものでも美味しく感じるってこと」
「ありきたりって……」
「ペペロンチーノはパスタの中でも『絶望のパスタ』って言うらしいわ、本場イタリアではね」
「絶望の?」
「どんなに貧乏でも作れるパスタ、っていう意味らしい。ソースがシンプルすぎて、レストランにも出ない程なんだって」
 遼はむっとした顔で利恵から目をそらした。
「たぶん……秋月くんは私のことが好きになってたわけじゃない。そうでしょ? 女の身体に興味があって、我慢できなくなったところに、初めての体験をした。抑えきれない身体の疼きが秋月くんの行為を後押しした、ってことなのよ」
「わかってた」遼が言った。「最初はそうだった。でも先生は卑怯だ、こうして何度も僕の身体を満足させてくれたら、好きにならないわけないじゃないか」
 利恵は震える声で返した。
「ありがとう。ごめんね」
「先生は僕のことが好きだったわけじゃないんですか? 好きでもない男とこんなことしても平気なんですか?」
 利恵の目からも涙がこぼれた。
「ごめんなさい。秋月くん。私、寂しさを埋めたかったの」
「寂しさ?」
 利恵は横になって向き合った遼の胸に顔を埋め、背中に回した腕でその身体を抱きしめながら言った。
「ずっと黙ってたけど、私には婚約者がいるの」
「えっ?!」遼は思わず叫んだ。
「彼は先月、事故で脊髄を痛めて下半身不随になっちゃったの。つまり――」利恵は一度言葉を切って一つため息をついた。「私を抱くこともできなくなった」
「先生……」
「女だって身体が疼くことがある。誰かにこの身体を慰めて欲しかった」
 遼は自分の身体を抱き、小さく震えているその人に掛ける言葉を見失っていた。
「わかって、秋月くん……」
 遼は狼狽していた。
「先生、今そんなことを言われたら……」
 利恵は顔を上げて遼の目を見つめた。
「だから、もう一度……最後にもう一度」

 二人は激しく唇を重ね合い、舌を絡め合った。そして遼は先生、先生、と呼びながら、利恵は秋月くんと何度も叫びながら、その熱くなった肌を重ね合い、きつく抱きしめ合い、すぐに深く繋がり合って全身でお互いの想いを、最後の想いを確かめ合った。そうして遼が利恵の中で弾けた時、二人は同じように全身を痙攣させ、もう二度と巡り来ない哀しく、甘美なクライマックスを迎えた。


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