天狗の面-5
「じゃあ、楽屋に戻ろうか」
支配人に促され、再び狭い廊下を通り、最初に連れ込まれた部屋に戻ると、支配人は準備をして来ると楽屋を出て行きました。既に覚悟を決めた母は私に話し掛け、
「秀樹、ちょっと廊下に出てて」
「う、うん」
私は、母に言われるまま廊下に出るも、そっと楽屋を覗き見ました。母は、浴衣の帯に指を掛けると、支配人に言われた通り、小夜子嬢のように艶めかしく腰を振りながら、浴衣を脱ぎだしました。浴衣をハラりと落とし、ベージュ色のスリップ姿になると、胸を震わせながらスリップを脱ぎ、ピンクのパンティ姿になりました。母は、お尻を振りながらパンティを両手で掴むと、ゆっくりお尻を露にしていきました。思わず、私はそんな母を見て勃起してしまいました。
「小夜子お姐さんの踊りは、もうちょっと品があったわねぇ・・・ン!?秀樹!廊下に出ててって言ったでしょう?」
「ゴ、ゴメン!」
母が私の視線に気づいたのか、ジィと睨んで声を掛けた為、私は慌てて覗くのを止め、母に謝りその場を離れました。暫くすると、先程の踊り子さんの小夜子嬢が戻って来られ、
「おやぁ!?こんな所に坊やが居る何て珍しいねぇ?」
「アッ、お疲れ様です。ちょっと母の付き添いで・・・」
「母!?アァァ!支配人が言ってた・・・そう」
小夜子嬢は濃い化粧で、ちょっと近くで見ると不気味でしたが、その笑い顔はちょっと可愛かったです。小夜子嬢が楽屋に入ると、母も慌てて小夜子嬢に挨拶し、何やら会話を始めましたが、その場に支配人が来た事で、私は二人の話に聞き耳立てる事は出来ませんでした。
「モモ嬢の支度は終わったか?」
「う〜ん、部屋から出るように言われたから・・・」
「そうか・・・」
支配人はそう言うと、楽屋の中に入りました。私も後から入ろうとするも、支配人に手で妨害され、中には入れませんでした。
「オッ!?モモ嬢、良いじゃない・・・小夜子嬢、この人が今日特別に出演してくれるモモ嬢だ」
「エエ、今挨拶されたわ。あんたもヒモのせいで苦労するわねぇ?」
「エッ!?ヒモですか?」
「そう、あんたの旦那の事」
「エェェ・・・後でじっくりお灸を据えます」
「「フフフフフ」」
母とモモ嬢のそんな会話が私の耳にも聞こえて居ました。支配人は、腕時計をチラリと見ると、
「じゃあモモ嬢、そろそろ行ってみようか」
「ハ、ハイ・・・」
支配人に促された母は、覚悟を決めたものの、やはりこれから舞台に立ってストリップをするという事に、かなり緊張しているようでした。
「大丈夫、旦那の前で服脱ぐ時の様に、気楽に行きな」
「ウフフ、お姐さんのショーを参考にさせてもらいます」
母の緊張気味の声が楽屋の中から聞こえ、そんな母を和ませるように、小夜子嬢が声を掛けると、母の緊張も解れたようでした。
「じゃあ、行こうか」
「ハイ!」
支配人に促された母が返事を返すと、楽屋から姿を現しました。母は蝶のような形をしたバタフライマスクを顔に付け、右手にはピンク色の羽毛扇子を持ち、衣装は真っ赤な花柄の襦袢を着て居ました。襦袢とは、着物の下に着る物で、着物版の下着のようなものだそうです。母が若い頃、着付けを習っていた事が、ひょんな事から幸いしたようでした。
「秀樹はここで留守番」
「エェェ!?」
私は母に、楽屋で留守番しているように言われ戸惑うと、支配人さんが笑い出し、
「アハハハ、モモ嬢、まあ良いじゃない。坊主もモモ嬢の事が心配何だよ・・・なぁ?」
「うん」
「しょうがないわねぇ・・・」
支配人が助け舟を出してくれた事で、母も渋々承諾し、母、支配人、そして私は、舞台のそでにやってくると、支配人はそでに置いてあったマイクを握り、場内にアナウンスを始めました。