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「悪魔の少年」
【ショタ 官能小説】

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㉕窃盗犯の取り調べ-1

㉕窃盗犯の取り調べ




香織の裁判が始まった。冒頭陳述「・・・・・・・・被告人は庭に落ちていた金属バットで久永光輝当時25歳を三度にわたり
殴打し同人を死に至らしめた。・・・・・・・この件に関して何か申し述べたい事はありますか。」
「はい裁判長、私は久永を二回しか叩いていません。」
「しかしこの供述調書によると三度となっておりあなたのサインもありますよ。」
香織には二度の記憶しかなくついそのように言ってしまったのだがここで供述を変えるのは印象が悪くなると思い
「いえ、二回に間違いありません。」と突っぱねた。裁判官は検事と弁護士を呼び何やら相談している。
「この件は真偽保留のまま次に向かいます。」裁判は粛々と進む。本人が自供しているのだから当然と言えば当然だった。
弁護士も彼女の量刑を軽くするための戦いだと認識していた。
その頃、多摩川は刑事部長の部屋にいた。「多摩川君、事件は一向に進まないがどうなっているんだね。」
「はい。遺体は頭部を残してすべて見つかっております。ただ被害者の身元がつかめず捜査は難航しています。
今は遺体の投棄場所近辺の聞き込みと失踪者名簿の確認を中心に捜査を進めています。」
「うん。僕は君の仕事ぶりを知っているからいいんだけど上がね。中間報告をしろと言って来たんだ。報告書を提出してくれるか。」
「はい。申し訳ありません。早速、中間報告書を提出いたします。」
警察上部へ提出する文書ゆえ細心の注意を払いながら書いた。行き詰った時は林警部の調書を参考にした。
その時多摩川の頭に電気が走った。空き巣犯の奥さんの供述だ。
「朝方帰ってきて震えながら泣いていた。」朝方?確か12時くらいには牧村美容室を出たはずだ。朝まで何をしていたんだろう。
もう中間報告書どころでは無い。さっそく林警部に連絡した。「本当だ。留置場から引っ張り出してすぐに調べるよ。」


「朝まで何をしていたんだ。」「はい。妻への誕生日プレゼントが無いのでもう一軒忍び込む家を探索していましたがなかなか
不在の家が見当たらず諦めて近くの公園のベンチで寝ていました。」
「どこの公園だ。」「よく覚えていないんですが、侵入した美容院からそう遠くは無かったと思います。」
「なぜあの時そう言わなかった?」「また色々調べられて留置が長引くのが嫌だったんです。本当にどこにも侵入していません。」
地図を持ち出した。「この公園か?ここが牧村美容室だ。」「よく覚えてないのですが、美容室の近くです。」
「じゃ、ここに間違いない。他の公園は10k以上離れている。明日の現場検証にはお前も付き合え。」


翌朝児童公園に4台の警察車両が横付けされた。林警部は着くなりベンチに目を向けた。
ない。この公園にはベンチが無いのだ。「お前が寝ていたというベンチは何処だ?」
「あれ、ありませんね。じゃ、この公園ではないかもしれない。」
一応の捜査をした後取調室に戻る。「他の公園はいずれも二時間以上離れている。ベンチで寝ていたと言うのは嘘だな。」
「もしかしたらベンチではなく芝生の上だったかもしれない。」「いい加減にしろ。正直に話せ。」林警部が一喝した。
男はガタガタと震え始め何も話せなくなった。黙秘しているのではない話せないのだ。ベテランの林にはそれがよく分かる。
以前にもあった。空き巣や万引きしかできない小心者が大罪を犯した時の反応だ。
それ以後毎日の様に取調室に引っ張り出したが供述は得られない。黙秘が続く。
ただ窃盗罪で拘留中なので林警部が焦る事は無かった。



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