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紅館の花達
【ファンタジー 官能小説】

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紅館の花達〜蒼猫花〜-3

『………』
『ウェザ?』
この服はウェザがゼロのために街で選んで買ってきた品だった。
それが無惨にも引き裂かれ、ウェザは素直に傷つき、悲しくなったのだ。
そして、悲しくなったウェザを見てゼロもまた傷ついた。
『………ふぇ………ひっく、うぇぇ………』
自分が破いてしまった服を集めて、破れた場所を合わせるが戻るはずもなく。
ゼロは泣き始めてしまった。
『うぇぇぇん………ヒック、ご………めんな………さい………ごめん………なさい………』
ウェザがそっとゼロを抱き締めると、諭すように囁いた。
『もう良いよ、ゼロ。
だけど覚えておいて、服はまた買えば良い。
でも、もう二度と手に入らないものもあるんだ。 だから、簡単に捨てたり、壊したりしちゃいけないんだよ。』
ポンポンと頭を叩き、いつものように撫でられた。
『今度、一緒に服を買いに行こうね。 そこでゼロが気に入る服を買おう。』
『ウン………ウン、ウェザ………ご………主人………たま………』


ゼロが紅館に来てから早一年が経った。
『おはよ〜♪』
今では言葉もちゃんと喋れるようになって、メイド達と一緒に働いていた。
今日も一番早く起きて朝の仕事を終えたゼロが食堂へとやってきた。
『フィ〜〜〜ルさん、おはよ〜〜♪』
『お〜〜、おはよ〜〜なゼロはん♪
今朝はなに食べとく?』
食堂のカウンターに顔がギリギリ乗るくらいのゼロはフィルに注文をする。
『ハンブァァァグ!』
『はいなーー、ハンブァァァグ一丁♪』
この食堂でハンバーグを注文してはいけないためハンブァァァグという。
何故なら、ハンバーグを注文するとフィル自身が出てくるから………
『はい、お待ち♪ ハンブァァァグ♪』←フィル=ハン=バーグ24歳独身禁断の恋大好き。
朝から熱い鉄板の上に縦10?横16?厚さ6?の超特大ハンバーグが乗せられて出された。
小柄………というか未だ12歳の体なゼロだがこれを全て食べてしまうのだ。
ちなみにこのハンバーグを食べきれるのはゼロただ一人。
胃袋よりデカイのでは? という周りのメイド達の視線を気にせず、ガブガブと頬張る。
『んぐんぐ………幸せ〜〜♪』
そんな中、ウェザが食堂に入ってきて皆に注目を求めた。
『皆、新しい仲間を紹介するよ。』
ウェザが言うと食堂に一人の女性が入ってきた。
すると皆が、特に男性陣が声を上げた。
入ってきた女性は背が高く肌は白く、手足は細くスラリと伸びて、長くて綺麗な黒髪とキリッとした目つきが印象的な美女だったからだ。
美女が多い紅館でも明らかに上位に入る。
『自己紹介を♪』
『はい、皆さん、初めまして。
スーザン=キリットシテールと言います。 よろしくお願いします。』
スーザンが頭を下げると長い黒髪がサラサラと垂れ下がる。
『にゃ、び、美人………♪』
ゼロは目の前のハンバーグのことも忘れてスーザンに見入っていた。
この時すでにゼロはレズビアンで有名だった。 というより、獣人としての発情期があるのだがゼロは納屋に居た頃の男の記憶があるせいか、或いはウェザという男の見本があるせいか、紅館に居る男にはまるで興味が沸かなかったのだ。
結果、対象が女性に向かったのだった。
『誰か居ないかい?』
考え事をしているうちに話が進んだようだ。
ウェザが言うには、今空き部屋が無いので、誰か相部屋をして欲しいとのことだった。
だが、男性はともかく女性にとってスーザンは冷静で、どことなく氷の美女のような恐い印象があった。
そのため皆ヒソヒソと声を潜めて話すだけだった。
『は〜〜い!!』
そんな中、ゼロが元気良く手を挙げた。 皆の視線がゼロに集まる。
女性は心配そうな、男性は羨ましそうな。
『よし、じゃあゼロに頼むよ。
スーザン、あの子と一緒で良いかい?』
スーザンはゼロを見てすぐに頷いた。


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