こ-7
「おい。柳下!」
ひ〜!大きな声でなにを言うのよ!
乾杯したジョッキからビールを一口飲んだ白木は
その場で立ちあがって柳下を探した。
お店の向こうの端に、名幹事よろしくこまごまとお世話をしている柳下がいて
その柳下に声が届くように、
いや、もしかしたらココにいるメンバーに宣言するように
大きな声で嬉しそうに話しだした。
「俺、松井と付き合うことにしたから」
そういって椅子に座る私を抱き上げた。
その声に一斉に振り向いた全員が一瞬シンッとなった。
あ、ぁ・・・
なんてこった。
私は、柳下の顔も斉藤の顔も見る事は出来なくて
なんだか悪いことをしている子供の様な気分だった。
きっと柳下も斉藤も、私の事なんかよりも
友達の白木の事を心配して
私にかこつけて、白木が新しい恋をしてくれることを願っているんだと思う。
だから、私のわがままに見せかけて
こんなに多くのメンバーをそろえたんだろう。
そんな気持ちを踏みにじるような行為に加担する事になった自分が恨めしい・・・
白木め!
こんな事に巻き込んで!
許さないからね!
「・・・それは、よかった」
シンッとなった店内で
一瞬ビックリした柳下が、静かなお店の中でつぶやいたその一言で
店内は驚きの声が方々から上がった。
こうして私は、翌日には大学全構内公認となった彼氏が出来た。