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はるかぜ
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しりとり-3

「きみ」

「きみ?卵? ……んーミックス」

「ミックスって……」

春風があははっと笑った。急に私は恥ずかしくなって少し唇が突き出てしまう。

「だって、浮かばなかったんだもん」

「……いいけど、ね。…す、でしょ。すき、とかにしようかな」

その『すき』が久しぶりに聞いた言葉でどきっとしてしまった。

「りつ、顔が赤いよ」

からかうように春風が言う。もー、うるさいな、と呟いて、『き』に続く言葉を考えた。

「うーん…。生糸」

「『と』か。じゃあ、とても」

「もー? も……じゃあ、流行ってるから萌」

「……りつってそういうの使わないと思ってたよ」

ぶっと春風がのんでいたスープを吹いた。慌てて布巾を差し出すとありがとう言って春風は受け取った。

「使わないけど、ハガキに『華燭さんは僕の萌です』って書いてあって……」

言い訳みたいにそう呟く。春風は分かった分かったという風に頷き、次の言葉を口にした。

「うーん。えいえん、なんてどうかな。あ、『ん』が、ついてる」

春風はしまったという顔をする。私はやったーっと万歳をした。
それで、空気が和んでしまって、それからは会話が弾んだ。


しりとり、っていう簡単なゲーム。
楽しかったなーって夜ベッドに入って思い出していた。
でも、春風ってしりとり弱いんだなーと思って、はっと気づく。

あの時、春風が言った単語の数々って……。

隣にはサイドテーブルに置かれたライトで本を読む春風。
そっと後ろから抱き付いて背中におでこをつけた。


「はる」

そう呼ぶと彼はそっと本を置いて私の手に自分の手を重ねた。それから、いつものように甘い声で返事をする。

「なに?」

「……私も、ずっと春風と居たい。好きよ」

そう『返事』をすると、春風は少し間をおいてから私の腕の中で方向を変えた。春風の顔が私をじっと見つめる。

「気づいちゃった?」

うん、と頷く私。春風はすこし居心地悪そうに笑ってからそっと私の額にキスをした。

「ありがとう」

と、呟いて。


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