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はるかぜ
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隣人は雨の香り-1

高校に合格した日私の両親は離婚した。
前から不仲だったのは気づいていたけれど、でも、私が今まで生きてきて一番幸せだった日に、帰宅早々そんな事を告げるのは如何な物かと思う。
でも、もっと如何な物かと思ったのは、4月になる前に私は家を出されて、親名義のマンションに引っ越しさせられた事だ。

両親の間でどんな話し合いがされたかなんて知らないけれど、お互いに愛人がいた2人は私が邪魔だったらしい。

だから、祖父の遺産の親名義のマンションを与えられた。


 ダンボールが積まれたまま、ただただ広い都心の高級マンションで冷たい床に座り込んでぼんやりと窓の外を見つめる。
窓にはまだカーテンを掛けていなくて東京の濁った夜空と遠くまで続く夜景が少しだけ見えた。

「都心の高級マンションに高校生が1人暮らしなんて贅沢だよね」

1人ぼそりと呟く。手元にある桜色のハンドバッグから携帯を取り出して画面を開く。

時間は20時。

1人でいる家がこんなに静かだなんて知らなかった。


「寂しいなあ」

また独り言。じんわりと涙が浮かぶ。

両親は私を今日申し訳なさそうに見送ってくれたけど、本当はどうだか分からないのだ。

心の中でせいせいしているかも知れない。

でも私は悪い子じゃなかったはずなのに。

むしろ、テストだってきちんとこなして優等生だったのに。


私は捨てられたのかも知れない。


頬を涙が落ちる。
都心の学校に受かって4月からも母の作ったお弁当を食べるはずだったのに。

どうしてこんな風になったんだろう。


涙は次から次から流れて止まらず、タートルネックの袖で拭うしかなかった。

今日、両親は私に言ってくれた。

二人は私を愛してるって。
でも私にはそれを信じる事も出来ないくらい傷が出来ているみたいだ。

心の一番大事な部分に。

「ダメダメ」

涙を拭って首を振る。

「これから1人っきりで暮らして行くんだから、泣いてなんか居られない」

立ち上がり引っ越し屋さんが設置していってくれた空の食器棚にバッグを持って近づく。
食器棚の真ん中あたりの高さ、ちょうど腰あたりに引き出しが3つついていて一番左のそれは鍵がかかるようになっている。


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