第7章 June bride-6
パパの顔がフッと自然体になった。私の心をも落ち着かせてくれるような優しい微笑みを浮かべる。
「みーちゃん、結婚おめでとう!ちょっとビックリさせちゃったかな?ゴメンね?でもパパは嬉しいよ。みーちゃんが結婚するの。きっと素敵なドレスを着て、ドレスに負けないぐらいに綺麗な花嫁姿をしてる事だろうね。ドレスは何色かなー。白かな?赤かな?ピンクかな?」
(パパ、ハズレだよ?)
私がそう思った瞬間、パパはそう私がそう思うことを見越していたかのような悪戯っぽい笑みを浮かべた。
「いや、みーちゃんはネモフィラが大好きだったから、ネモフィラのような青のドレスを着てるんじゃないかな…、って思う!」
パパはそう言って眼を閉じ、私の花嫁姿を頭に思い描いているようであった。
私は驚いた。まさか今の私を見て天国のパパが喋っているのではないかと思った。10年以上も後の私の気持ちを見越していただなんて凄い。同時に本当に私の事を理解してくれていた、愛してくれていたんだなと思った。
「うん、似合うよ、みーちゃん!正直言ってママん時よりも綺麗だよ!」
目を開けたパパがそう言うと、カメラ役のお母さんの声が聞こえた。
「ちょっとぉ!」
「ハハハ!ゴメンゴメン!ママと同じぐらい綺麗だよ!」
ついついふざけてしまうのも照れ隠しの証だろう。そうそう、パパは人を揶揄うのが好きだった。子供みたいに悪戯っぽい笑顔を浮かべながら。ほっぺを膨らませる私を見て良く笑ってたよ。私の意識が少しずつあの頃に戻って行く。
「パパはみーちゃんの結婚式に出るのが夢だったんだよ。こう言う形でもみーちゃんの結婚式に出れて本当に嬉しいよ。」
パパはまた目を閉じる。もしかしたら私とバージョンロードを歩き、花嫁の父親として結婚式に参加している姿を頭の中に思い浮かべているのかも知れない。私はそんなパパの顔をじっと見つめていた。
あー、パパだ。私のパパだ…。私が大好きだった、いつも優しいパパだ…、そう思いながら。私の意識の中では死別したのではなく、久しぶりに再会したかのような気持ちになっていた。私の心の中ではずっとパパは生きていたのだから。声が聞けて嬉しい…、それが今の自分の気持ちなのであった。