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June bride
【純愛 恋愛小説】

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第7章 June bride-5

その瞬間、私の耳に懐かしく温かい声が聞こえた。

「みーちゃん…」
と。

間違いなく聞こえた。決して忘れる事のない声…。あなたの声。

『みーちゃん、綺麗だろ?ネモフィラ。』
『みーちゃん、いわし名人だね!』
『みーちゃん、お腹空いた?』
『みーちゃん、眠い?』
『みーちゃん、疲れた?』
『みーちゃん、パパの事好き?』
パパはいつも優しく私の名前を呼び、そして優しい笑顔を浮かべながら私の顔を覗き込むように話しかけてくれた。そして今、再び変わららぬ優しい声で私を呼んだ。

驚いた私の時間はまるで止まったかのように思えた。もしかして目の前にパパがいる…?私は体が震えた。会いたかった…。ずっと会いたかった。奇跡が起きたのか、もしかしてパパは死んだのではなく長い間海外出張に行っていたのか…、私の胸は激しく鼓動した。

ゆっくりと顔を上げる。そして目の前の写真がある場所を見つめた瞬間、そこでパパの表情は動いていた。パパの顔以外の光景は白くぼやけて見えた。眩しいばかりのパパの顔しか見えなかった。

「パパ…」
私の瞳から涙が溢れる。

これはお母さんのサプライズであった。写真はモニターになっていて、そこに動画が流れていたのであった。しかし私にはパパが生き返り、目の前で微笑みかけてくれているとしか思えなかった。それ程私の中でずっとずっとパパを愛していた証だったのだ。

「みーちゃん…。…き、緊張しちゃうなぁ…!や、やり直していーい?」
パパがこちらを見て頭を掻きながら照れ笑いを浮かべている。
「もう、パパ、緊張しすぎだよ〜。」
パパに答える声はお母さんの声だ。そこで私が見ているのはパパが生前に録画してあった動画であり、録っているのはお母さんだと言う事に気付いた。ようやく私の目は現実に戻った。

「俺のアガリ症、知ってんじゃん!」
「アハハ、知ってるよ。ほら、みーちゃんの結婚式の時に流すんだからちゃんとやりなよ〜。」
「そーやってプレッシャーかけるなよ〜。」
パパはそう言って大きく深呼吸し、自分を落ち着かせるかのようにカメラをじっと見つめた。

「オッケー、オッケー!もう大丈夫だよ!じゃあいくよ?」
「ハイハイ♪」
そんなパパに私は思わず笑ってしまった。
(大丈夫かな、パパ。しっかりっ!!)
パパのあまりの緊張具合に私の心も落ちついた。もしかしてきっとこれを見たら泣いてしまうであろう私を気遣ってくれたのかな…。笑顔でいて貰いたいからパパはわざとそんな姿を見せたのかもしれないな、そう思った。


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