ウラ-5
取調室に入って来たマギーを見た明子は敵意剥き出しの目でマギーを睨むように見るとすぐに不機嫌そうにソッポを向いた。
「こんにちは。すっかり元気になられたようで。」
マギーは穏やかに話しかけた。
「元気じゃないわよ!ねぇあなたも女なら分かるでしょ!?シャワーぐらい浴びさせてよっ!!」
机をバーンと叩いて怒りを露わにする。
「そうカッカすると余計に汗をかいてまた臭くなっちゃいますよ?」
「し、失礼ねっ!私は汗をかいでも臭くならないんで!」
「ならシャワー要らないじゃないですか。」
「…、汗とかじゃなくてシャワーを浴びて気分転換したいって事よっ…!」
正論を言われて、若干の苦し紛れ感を滲ませた明子。マギーは至って冷静に対応する。
「残念ながらここは快適な時間を過ごす場所ではないので。」
「シャワーを浴びる権利ぐらいあるでしょ!?」
「ありません。」
毅然と答えるマギー。今まで自分に反抗する人間などいなかった明子は上から見られている事に苛立ちを隠せない。
「ムカつく女ね…」
「あなはもっとムカつく女だけどね?クスッ」
タメ語で馬鹿にされたように笑うマギーに目を釣り上げる。
「あんた何様よ!!」
「刑事だけど?」
「分かってるわよそんな事!!刑事がそんなに偉いの!?」
「話を変えましょう。あなたは何様?」
「わ、私は…」
「あなたはまだ自分が犯罪者だと言う自覚がないようね。いーい、あなたはもう被害者じゃないの。枕営業と贈賄をして市長選に勝ち晴れて市長になった汚職元市長なのよ?分かる?」
明子は歯をギリギリさせながらマギーを睨む。
「…、女のくせに刑事なんてしてる分際で!」
「私からしたら体を使うしか能がない分際で市長なんてって感じかな??フフッ」
「わ、私は体を使うだけの女じゃないわ!ちゃんと政治の勉強もして知識もあるわ!あんただって他の男刑事に抱かれまくってのし上がって来たんじゃないの!?」
「いえいえ、私は節操あるので。あなたとは違って。」
「私が節操ない女だと言うの!?フザないでよあんた!!名誉毀損で…」
椅子から立ち上がりそう叫んだ瞬間、マギーが冷静に言った。
「あなた、ビッツコインに絡んでる??」
その言葉を受けた明子の表情が一変する。怒りを押し殺しゆっくりと腰を降ろし椅子に尻をつけた。
(あ、ホントだ。威勢がなくなった…)
華英は取調室に入る時にマギーが言った通りになった事に驚いた。マギーは明子らがビッツコインと何か関わりがあると睨んでいた事に気付いた。そしてあれ程騒いでいた佐川明子がビッツコインと言う言葉を聞いただけですっかり威勢を無くした事に、一体どのような関わり方をしているのだろうと耳を傾けるのであった。