新たなる手口-3
苛つくマギーが早足になったのか、華英が速度を落としたのか分からないが、気付くと二人は肩を並べて歩いていた。肩を並べた時にマギーは誰かと電話をしていた。
「では今からお伺いしますので。」
そう言って電話を切った。
華英が全く悪びれる事なく聞いてきた。
「今からドコ行くの?」
「龍酷会。」
ぶっきらぼうに答えたマギーに華英は怪訝そうな顔をした。
「龍酷会って…、ヤクザの…?」
「そうよ。」
マギーは前を向いてブラウンの髪を風に揺らしながら答える。
「なんでヤクザんトコ行くの!?まさか…マギー…」
どうせまたロクでもない事を言うのだろうと思ったマギーの予想通りの言葉が返って来た。
「マギーって、組長の…愛人!?」
マギーはため息混じりに答える。
「そんな訳ないでしょ…(ったく…)」
しかし矢継ぎ足に聞いてくる。
「じゃあ何か弱み握られてセフレにされてるとか!?」
「バカじゃん!?」
「じゃあ…秘密でヤクザに情報渡してるスパイとか…」
「あんたねー、どうしてそう下らない事ばかり頭に浮かんで来るのよ…。」
流石に呆れてしまった。なぜ龍酷会に行くのか答えないまま面パトに乗り走らせる。
「ねーねー、良く行くの?ヤクザんトコ。」
運転しながら少し緊張した面持ちで聞いてくる。
「たまにね。情報欲しい時に。」
「ヤクザが情報くれるの??お金払ってるの??」
だんだん面倒臭くなって来たマギーは華英に合わせて適当に答え始める。
「まー謝礼で1回10万ぐらい渡すかな。勿論暗黙の了解で上に話は通してるわ?でも今日はお金ないから華英を差し出そうと思って、さ?」
ニコッと笑う。
「さ、差し出すって??」
不安いっぱいの表情がたまらない。マギーは悪魔の笑みを浮かべて話を続ける。
「私も上原さんに連れて行かれた時、まさかとは思ったけど、本当に私を献上してね。一週間地獄だったわ…。」
「な、何をされたんですか…??」
「それは言えないの。あくまで警察と龍酷会の密約だから、口外できないのよ。」
「マジ…?」
本気で怯える華英が面白くて仕方がない。普段の鬱憤を晴らすかのようにマギーは遠くを見つめて呟いた。
「上原さんも酷いわ…。ヤクザに私の処女を献上させておいて杉山クンには、私は処女だからって吹き込んでたから、杉山クンとの初めての夜の時、処女のフリするの、大変だったんだから…。一週間ですっかり体を開発されて色んな事を覚えさせられたのに、何も知らない、何もできない処女のフリをしなきゃならなかったんだからね…。一生杉山クンには言えない事だわ…」
「マ…ジ…?」
どうやら華英は本当に信じてしまったようだ。マギーは腹を抱えて笑いたいのを我慢しながら窓の外の景色に顔を向けていたのであった。