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疼きに喰い込む赤い縄
【その他 官能小説】

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究極の-3

 私は、はあっ、とため息をついた。
 「知り合いだったんだ…」
 先輩は少し寂しそうな目をした。
 「そうだよ。部屋に行ったこともある。君は居なかったけど。」
 居たらどうなってたんだろう。
 「その時、SUVの話で盛り上がったっけなあ。メルシやベンヴェはしょうがないとして、ポルッチが最大の汚点を残しちゃったなあ、とか、とうとうフェラとランボも陥落したらしい、なんという情けない時代だ、って嘆きあったよ。SUVというジャンルを否定してるんじゃなくて、せっかくのプレミアム・スポーツのブランドが作る車種じゃないだろ、売れるからって、っていう意味だからね。誤解しないように。」
 うーん、話を聞いてると、先輩っていかにも幸雄さんと気が合いそうだ。
 「あの、幸雄さんのことなんですけどね、先輩。」
 「あ、うん。」
 「あるんですね、そんな偶然が。」
 先輩は手に持ったコーヒーカップに視線を落とした。
 「必然、かもしれない。俺はこんな仕事で、幸雄さんは…お得意様だから。」
 「…え?」
 「そう。彼は寝取ラーさ。あ、自分ではしないよ、鑑賞のみ…だった。」
 「ね、ネトラー…。」
 先輩が天井にチラリと視線を投げた。
 「性癖というのはね、エスカレートするんだ。幸雄さんは、最初はありふれた寝取りAVで満足していた。やがて物足りなくなって違法な裏サイトに手を出した。そこまではまあ、よくある話かもしれない。」
 「ええ。知らないけど。」
 「でもね、結局は作り物なんだよ。裏も表も。」
 「それはまあそうでしょうね。」
 「だから彼は悶々とした。偽物じゃ満足できない。でも、本物なんて見れるわけがない。」
 「そうですね。」
 「そんなとき、たまたま後輩の相談を受けたんだ。どうも僕の彼女が怪しいんだけど、証拠がなくて追及出来ないんです、って。」
 「ああ、幸雄さんて後輩に慕われてますから。普通はしないような相談もされてるみたいです。」
 「そのようだね。で、彼は閃いたんだ。隠しカメラを仕掛けて、現場を押さえてやろうよ、と。」
 「それを実行した?」
 「うん。その後輩が彼女と同棲してる部屋にいくつかカメラを仕掛けた。で、泊まりの出張の後で二人で確認したら…」
 「写っちゃってたんですね。」
 先輩は眉を寄せて頷き、コーヒーを口に運んだ。
 「その彼女っていうのがね、幸雄さんも何度か会ったことがあるらしいんだけど、清楚で内気な少女を絵に描いたような子だったらしい。後輩によると、エッチの時は必ず灯りを消して恥ずかしそうに体を隠すぐらいの。
 「そんなおとなしい女の子が浮気なんかするんですか?」
 「全然しそうに見えない。ところが。モニタの中のその子は自分から大股開いて相手の男の頭を掴んで擦り付けてたんだ。野獣みたいなヨがり声をあげながら。」
 「うわ…」
 「実は俺、見せてもらったんだけど、その後も凄いことになってた。体のどこにでもなんでもさせるんだ、全く拒否せずに。彼氏には見られるのも恥ずかしがるのにだよ?されるまま、命じられるままさ。見せる、ヤらせる。その上、しゃぶり方も常軌を逸してた。男の方がちょっと腰を引いちゃうくらいにガッつくんだ。完全に欲情に狂ってた。」
 …他人事とは思えない。私も我を忘れて快楽に落ちたんだから。
 「しまいには男に見せつけながら自分で自分をグチャグチャに虐めて何度も何度も…。可愛らしい顔を歪めて涎を垂らし、髪を振り乱してベッドの上で身をくねらせながら引っ掻き回してた。」
 そんな姿を見てしまったなんて。
 「その後輩さん、ショックだったでしょうね。」
 「真っ青になって唇震わせて額に青筋立ってたらしい。」
 「可哀想に。」
 「一方の幸雄さんは…。それを見ながらしごいたんだ。」
 「は?」
 私は見たことがある。幸雄さんが自分でしてるのを。そしてそれに煽られた私はその後…。
 「頼ってきた後輩の彼女が寝取られて乱れ狂っているのを見ながら、その後輩のすぐそばでしたっていうの!?」
 「そう。そして、その時の興奮が忘れられなくなった。恋人がいるのに他の男に好き放題に可愛がられて乱れ狂い、しかもその様子を恋人にビデオで見られている清楚な女の子。最高のシチュエーションさ。」
 「幸雄さん…」
 私はそんな人と一緒に暮らしてきたのか。
 「味をしめた彼は、他の後輩や知り合いにそれとなく浮気の疑惑が無いか探りを入れたけど、まあそんなもん出てこないよな、普通。ネットで探し回ったって、ホンモノなんて簡単には引っかからない。で。」
 「先輩に相談した?」
 「その通り。まさかすぐ近くにプロが居るとは思わなかったんだろうね。ダメ元感満載で訊かれたよ。リアルな寝取りを見る方法ないかなあ、って笑いながら。そして彼はお得意様になった。」
 「…私じゃ満足できなかった、ってことなんですね。そんなことに走るなんて。」
 「うーん、性癖ってそんな単純なものじゃないよ。毎日和食を食べてそれはそれで充分満足していても、パスタが好きなら時々は食べたいだろ?ランチで満腹になってもデザートも食べたい、とか。」
 「分かる…けど、分かりたくない。なんだかんだ言ったって、要するに私以外の女を見て興奮したいわけでしょ?」
 「そう。幸雄さんも同じ矛盾にたどり着いた。心から君を愛しているのに、他の女で興奮することを止められない自分に悩んだ。」
 「…生真面目な彼らしい悩み、と言えば聞こえはいいけど、私を裏切っていることに変わりはありませんよ。」
 私が吐き捨てるように言うと、先輩は静かな声で尋ねてきた。


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