二人きりの音楽室-3
「そこじゃないですよ。」
私は彼を摘まみ、位置を直した。彼のそれは、表面は柔らかいけどしっかりと芯があり、温かくて脈打っていた。
「ふんっ」
博也さんが体重を掛けてきた。私のそこは十分に湿っていたけれど、なかなかスムーズに滑らない。
「ふんっ！」
さらに圧力を感じた。
「っ…」
メリメリ、っと、こじ開けられていく感覚は激しい痛みを伴っていて、涙が滲んで泣きそうになったけど、真剣な博也さんの目を見つめて耐えた。
「はあっ！」
ジュル。
「あっ…」
彼の先端がついに侵入してきた。
「大丈夫か、直香。」
心配そうな博也さんに、私は心が温かくなった。
「大丈夫…じゃないですよ。ウワサ以上に痛いです。でも、同時にすごく幸せです。だから…」
「ああ。俺に君の体をあずけてくれ。」
「はい。」
ズン。
「くはっ…」
ズーン、ズーン。
「ぐうぅ…」
正直言ってぜんぜん気持ちよくなんかない。痛くて痛くて、しかも気色悪い。自分の中に異物を捻じ込まれて掻き回されているのだから。
ズーン、ズーン。
「くぅ…う、うぅ…」
それでも私は…私は彼を受け入れ続けた。
やがて。
「む、むう、うぅ…」
博也さんが声を漏らし始めた。それは、聞いたことのないような異様な声だった。
「どうしたの？大丈夫？」
彼は顔を歪めた。
「だ、大丈夫なんだけどね、大丈夫じゃ…うっ、ない、かも。」
「え？」
彼の腰の動きが早まった。
「出る…。」
何が、とはさすがに訊かなかった。知識としては知っていたから。
「いいよ、出して。」
「う、うん。」
さらに前後運動の速度が上がり、私の腰は大きく揺さぶられ、彼は息を切らし始めた。
「あ！」
私は大声を出してしまった。
「何？」
彼がちょっと苛立ったような声を出した。
「待って！」
「何を。」
「いいから待って！出さないで！」
「無理。」
「ダメ！」
「止まらないよ。」
「ダメだってばー！」
「こっちもダメだってばー！」
「出さないでー！」
「無理ー！」
ズンッ。
ひときわ重く深い突きを受けた下腹部が跳ねた。博也さんはそのまま硬直したように静止し、私の中で何かが脈打つのを感じた。
「う…」
ガクリ、と博也さんが私の上に落ちてきた。
「ねえ…。」
数センチしか離れていない彼の耳に囁いた。
「ん？」
「ん、じゃなくて。」
「何？」
「出した、よね。私の中で。」
「え…。あ！」
今度は彼が大声を出した。
ジュポン。
慌てて引き抜いた彼の先端には白濁した液体がまとわりついており、それには微かに赤いものが混じっていた。
「…。」
「…。」
「あのさ、直香…。」
「うん…。」
さっきの勢いはどこへやら。博也さんは泣きそうになっている。
「率直に言うね。」
「はい。」
はあっ、と息を吐いてから彼は言った。
「どうしよう。」
「どうしよう、じゃありません。出しちゃったものはしょうがないです。」
「あ、うん…。」
はあっ、と息を吐いてから私は言った。
「今、ざっと計算した限りにおいては、命中率は低いと思います。」
伊巻先輩の顔に安堵が広がった。それを見て、私の中になんだかガッカリが広がっていった。
それからの二人は、残念ながら順調にとはいかなかった。
仰木先輩の件があるから表立ってイチャつけないし、ＳＮＳも同じ理由で不可。スマホは親が監視アプリ入れてるから当たり障り無い話しか出来ない。
それでもなんとか周囲を胡麻化して時々はデートを楽しんだ。
そんなこんなで気が付けば年を越し、先輩は卒業してしまった。それを境に徐々に連絡が途切れ…。十代の恋のパターン通りの結末と言えるのかもしれない。
電話番号、ＩＤ、アドレス。全部そのまま残っていたけど、何度目かの機種変で淘汰された。