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疼きに喰い込む赤い縄
【その他 官能小説】

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光る眼-1

 普通に出会って普通に恋に落ち、普通に結婚。
 卒業後の私は、まさに絵にかいたような人生を歩み始めていた。
 就職した地元の会社で何も分からない私に辛抱強く仕事を教えてくれた上司…。それが今の私の夫、浜浦幸雄さんだ。
 車好きの彼の愛車でわざわざ遠出することが多かったデート。
 彼のワンルームで迎えた、初めての朝。
 親に反対されつつも始めた二人の生活。
 やがて周囲の理解を勝ち取り、ようやく正式に籍を入れてささやかな式を挙げたのが五年前。
 幸雄さんは派手な業績を上げることこそ無かったが、堅実な仕事ぶりと誠実な人柄で同僚たちに慕われ、今では会社の約半数を束ねる上級管理職兼役員として頑張っている。
 子供はまだいない。望んではいるのだが、彼は仕事が忙しく、なかなか二人の時間がとれないのだ。
 それでも、ベッドを共にすることが出来た夜には、彼はとても優しく、そして情熱的に愛してくれる。回数の問題ではないのだ。私は十分に満足している。
 いや…。満足していた。
 ある日、いつもの様に夕飯の買い物を済ませた私は家に向かって歩いていた。
 幸雄さんは今日は出張で帰らない。寂しい夜が待っている。急ぐこともないので、なんとなく通りがかりのコンビニに立ち寄った。
 書籍のコーナーで大きな付録付きの女性ファッション誌を眺めていると、ふと隣にある成人コーナーが視界に入った。下品な格好をした女たちが恥ずかしげもなく胸や股間をチラつかせている。
 正直、不愉快に感じた。が、妙に気になった。店には他に誰も居ないし、店員は離れた棚の所で何か作業をしている。
 一つ手にとってみた。その理由はよく覚えていない。
 売っているからには需要があるはずで、だったら中身はいったいどんなものなんだろう、という、軽い興味だったように思う。
 「うわ…。」
 期待を裏切らない内容だった。なんともまあストレートに挑発している。こういうので男の人は興奮するのか。そしてその興奮を…。
 そこまで考えた時、私は下腹部に軽い疼きを感じた。私が今手にしている本を見ながら、男の人が自分でしている所を妄想してしまったのだ。急いで雑誌を棚に戻し、元の女性ファッション誌をパラパラと眺めた後、お菓子をいくつか買って店を出た。
 実は、私は夫が自分でしているところを見てしまったことがある。
 いつもの様に先に就寝した夜。なんだか気配を感じてトイレの前に行くと、いつの間にか帰宅していた夫が半開きのドアの向こうで自分をしごいていた。私は突然のことに動けなくなり…彼が出す瞬間まで見届けてしまった。
 ガクリ、と脱力した夫が振り返りそうになったので、慌てて寝室に戻った。でも、なんだか目が冴えて眠れなかった。
 しばらくすると夫が隣のベッドに入る気配がした。彼はすぐに寝息を立て始めた。私はついさっきの彼の行為が目の奥から離れず、悶々としているうち、気が付くと手がパジャマの股間を撫でていた。
 「…高校生じゃあるまいし。自分でなんて。」
 そう呟いたが、指は動き続け、パジャマにもぐりこみ、ついにはパンティに侵入した。
 「何やってるんだろ私。夫が隣で寝てる所でこんなことするなんて。」
 しかし、いったん火の点いてしまった欲情は簡単には消えてくれなかった。
 敏感な突起をこねていた指が谷間を蛇行しながら下り、とうとう自分の中へと吸い込まれていった。
 「うぅ…」
 うっかり声が漏れてしまった。横目で夫を見たが、反対側を向いたままスヤスヤと寝息をたてていて、動かない。
 私の指は行動を再開した。
 それは、忘れていた感覚だった。自分の意志で、自分が望む部分を、自分の指で。体が求めるままに自分で自分を弄って快感を得る…。夫にされることが情欲の全てになっていた私には、もはや過去の記憶でしかない行為になっていた。なのに。
 夫が自分でしている姿を目の当たりにし、刺激を受けた私は自分もしてしまったのだ。
 「っ…」
 絶頂を迎えた瞬間、またも声を漏らしかけた。それほどまでに強烈に私を飲み込んだ快感の波は、懐かしいけど新鮮だった。
 夫に与えられる絶頂とは明らかに異質なその悦び…。私はその夜以降、時々自分を慰めるようになった。
 仕事にかまけて私を満足させない彼が悪い、なんて全く思ってなんかいない。ただ、疼きが指を呼ぶのだ。
 「今日も帰ったらしちゃうのかな。」
 コンビニからの帰り道、私はなんだかソワソワしたような後ろめたいような気分で家路を急いだ。
 ピロリロリーン、ピロリーロリーン。
 着信だ。なんとなく見覚えがあるような番号だけど…。幸雄さんの仕事関係の人?だとしたら、どうして私に掛けてきたんだろう。
 不吉な予感に、胸に重く黒いものが落ちた。まさか、あの人の身に何か…。
 「もしもし。」
 『あ、もしもし。杉本さんですか。』
 旧姓で呼ばれるのは久しぶりだ。誰だろう。
 「そうですが、あなたは…」
 『俺だよ、俺。』
 なんだかあやしい電話だ。詐欺?
 「あの、どちら様でしょうか。」
 『オレオレ、なんてね。あ、切らないで!伊巻です。』
 「え…。伊巻先輩!?」
 『そうだよ。久しぶり。さっきコンビニにいるの見かけたからさ、掛けてみたんだ。』
 「え?どこにいたんですか。」
 『外。駐車場だよ。仕事の合間に気分転換に出たんだ。コンビニのお菓子摘まんでコーヒー飲んで、軽く寝てた。そしたらさ、なんとなく見覚えのある綺麗な女性が本のコーナーに立ってて。』
 間違いない。この感じは伊巻先輩だ。私の胸に懐かしさとともに切なさが蘇ってきた。
 「今どこですか?まだ駐車場に居ます?」
 『後ろ。』
 「え?」
 『後ろだよ。見て。』
 振り返ると、少し離れた路上に大きくて真っ黒な四角い車が停まっていた。獲物を睨む猛獣の眼のような、細長いデザインのヘッドライトが二回光った。


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