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良助
【青春 恋愛小説】

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2 順子-4

 「小山君、受験勉強進んでる?」
 「進んでるけどゴールが見えない」
 「そうかぁ。こればっかりはやってみないと分からないものね」
 「うん、試験って運があるだろ?」
 「そう。どうしてもね」
 「だから僕は小山式勉強法を考え出した」
 「どういう?」
 「運を初めから計算に入れて勉強するんだ」
 「運を計算に入れてって、どうやるの?」
 「勉強する所を半分に削るんだ」
 「半分に削る?」
 「うん。全体をまんべんなく勉強すると全体が分からなくなるから半分だけ集中して勉強するんだ」
 「なるほど。でもそうすると運が悪いと零点だね」
 「そうだ。でも例えば合格点が50点だとするだろ。そうすると全体を勉強すると運に関係なく49点しか取れないんだ。49点でも合格しないから零点と同じだろ。でも小山式だと運が良ければ50点取れるんだ」
 「運が良ければ70点くらい取れそうだね」
 「そこまで頑張る必要は無い。50点取れば合格なんだから」
 「なるほど。考えたわね。でもそれ、人には言わない方がいいよ。特に先生には」
 「どうして? 先生に言えばみんなに教えてやれるじゃないか」
 「ううん、悪いこと言わないから先生には言わない方がいい」
 「そうかあ? 田宮がそう言うなら言わないけど」
 「お姉さん元気?」
 「元気過ぎる」
 「うちのお父さんが小山君とお姉さん連れて来ないかって言ってたけど、勉強で忙しいかな?」
 「勉強は忙しくない時にやるからいいけど、何で?」
 「うーん、お姉さんの写真雑誌に載ってたでしょう? それを見てたから『これ私の友達のお姉さんなのよ。文化祭の時に紹介されたのよ』って言ったの。そしたら是非ともうちに連れてきなさいって」
 「それじゃ姉さんにそう言ってみる」
 「小山君も一緒に来るのよ」
 「僕も? 僕は別に雑誌に載ってないよ」
 「そうだけど本当は小山君に会ってみたいのよ。ついでに雑誌に載ってる美人にも会えたらいいなっていうんでしょ」
 「そうか。雑誌に載るってそんなに凄いことなのか?」
 「うん、男の人にはそうみたい」
 「粕谷もその雑誌持ってたな」
 「小山君は?」
 「毎日本物見てうんざりしてるのに、雑誌買って見る気になんかなんないよ」
 「そうか、うんざりしているの?」
 「鬼の顔見て美人だ美人だって騒ぐ気が知れない」
 「酷いこと言うのね。凄い美人じゃない」
 「田宮の方が余程美人だと思う」
 「あら、小山君私のこと美人だと思ってくれてるの?」
 「みんなそう言うだろ?」
 「みんなはどうでもいいの。小山君がそう思ってくれてるかどうかが聞きたいの」
 「美人だと思うって今言ったじゃないか」
 「私も涼子も美人だなんて思わないって、前は言ってたんでしょう?」
 「なんで知ってるの?」
 「いろいろ情報網があるから」
 「うーん、この頃だんだん美人に見えてきた」
 「そう、有り難う。嬉しいわ」
 「でも僕が言わなくても前から美人だったんじゃないか。僕が気が付かなかっただけで」
 「そうだけど小山君が気が付いてくれたということが大切なことなの」
 「おかしなこと言うな。田宮の顔は前から変わらないで僕の見方が変わっただけなんだよ」
 「木原さんとどっちが美人に見える?」
 「さあー、木原のことは今でもどこが美人なのか良く分からない」
 「嬉しいわ。有り難う」
 「嬉しい?」
 「うん」
 「田宮ってやっぱり木原と仲が良くないんだな」
 「どうして? そんなこと無いわよ」
 「まあいい。喧嘩なんかしないで仲良くするんだよ。それが大人ってもんなんだ」
 「あら、小山君にそんなこと言われるとは思わなかった」
 「僕も少しずつ大人になってきてるんだ」



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