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良助
【青春 恋愛小説】

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2 順子-5

 「姉さん」
 「あら珍しい。どうしたの?」
 「田宮が家に遊びに来いって言うんだけど」
 「また息抜きか。でも何でわざわざ私に言いに来たの。こそこそ隠れて私に会わないようにしてたじゃないの、この頃」
 「別にそんなことは無い」
 「そんなこと無いこと無いでしょ? 同じうちに住んでて何日顔会わして無いと思ってんの」
 「たまたまだろ」
 「そんなこと無い」
 「そんなこと無いこと無い」
 「まあいいわ。で、何だって?」
 「だから田宮が家に遊びに来いって」
 「いいわよ、行ってらっしゃい。駄目だって言ったってどうせ行くんでしょ」
 「良く分かっているじゃないか。それでもし良かったら姉さんも一緒に来ないかって言うんだけど、都合が悪いよね。じゃ」
 「待てっ」
 「僕、勉強しないといけないから」
 「ちょっと、こっちおいで」
 「何? 話なら此処でも聞こえるから」
 「此処に来なさい」
 「女性の部屋に入るのは失礼だから」
 「何が失礼だよ。いいから来なさい。取って食ったりするんだから」
 「取って食ったりしないからって、普通言うんじゃないの?」
 「良介も近頃減らず口になったね。此処に座りなさい」
 「へい」
 「それは粕谷君の影響だね。へい、なんて返事は駄目」
 「はい」
 「良し。今なんて言った?」
 「はいって言った」
 「その前」
 「取って食ったりしないからって、普通言うんじゃないの?」
 「その前」
 「さあ? あ、女性の部屋に入るのは失礼だから」
 「その前だよ。田宮さんの家に呼ばれたって?」
 「うん」
 「それで私も連れて来いって?」
 「そんなこと言って無いよ。もし万一ひょっとしての話、あの、僕は唯の社交辞令で付け足したんだと思うんだけど、万々が一その気になったら一緒に来ないかって言ってたような気がする」
 「万々が一その気になっちゃった」
 「え?」
 「だからその気になった」
 「社交辞令だと思うよ」
 「社交辞令には答えないといけない」
 「え? 社交辞令って答えないのが礼儀なんじゃ無いの?」
 「良介に礼儀を教わりたくない」
 「いつ行くの?」
 「それは先方の都合に合わせるのが礼儀なんだよ」
 「それじゃ聞いてみるけど、姉さんいつなら都合が悪いの?」
 「いつなら都合がいいのって聞くんじゃ無いの、普通」
 「ああ、間違えた。いつなら都合がいいの?」
 「いつでもいい」
 「いつでも? 1日くらい都合の悪い日は無いの?」
 「無い」
 「もしそういう日に当たっちゃうといけないから予め聞いておいた方がいいと思うんだけど」
 「じゃ、良く聞きなさい。都合の悪い日は無い」
 「行ってもつまらないと思うよ」
 「面白くて行くんじゃ無い」
 「じゃ何で?」
 「先方は、あんたの弟をうちの娘に近づかせんでくれって言いたいから私を呼んだんだ」
 「え?」
 「だから私に用があるんで、良介は付け足しだ」
 「えー? 本当かよ?」
 「うん、多分そうだろう。そうに違い無い」
 「そ、そうだったのか」
 「そうで無きゃ私を呼ぶ筈が無いだろ」
 「うーん」
 「だからこっちの都合を言って断る訳には行かないんだ」
 「そうだったのか」
 「まあ、その失意を勉強のバネにしなさい」
 「そうだったのかあ」


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